私たちIPPNW日本支部は、被爆者の声を世界に伝え続け、核兵器廃絶のために長年にわたり奮闘してきた日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)が、2024年のノーベル平和賞を受賞したことを心から祝福いたします。この受賞は、被爆者たちの証言が「核のタブー」の形成に寄与し、核兵器のない世界の実現に向けた国際的な運動を支えてきたことが改めて評価されたものです。
広島・長崎での原爆投下から80年近くが経過する中で、被爆者が語る個々の体験は、核兵器の非人道性を私たちに強く訴えかけています。核兵器の使用がもたらす破壊的な影響は決して過去のものではなく、現在も世界の安全に重大な影を落としています。このような状況下での受賞は、被爆者の体験を未来に伝え続け、核兵器廃絶を目指す世界的な取り組みの重要性を再認識させるものです。
私たちIPPNW日本支部は引き続き、日本被団協とともに核兵器廃絶に向けた努力を続けてまいります。そして、核兵器のない平和な未来を次世代に引き継ぐために、すべての人々と連携して行動していくことを約束いたします。
2024(令和6)年10月29日
IPPNW日本支部
<English Translation>
The Japanese affiliate of IPPNW, or JPPNW, wholeheartedly congratulates Nihon Hidankyo on being awarded the 2024 Nobel Peace Prize for its tireless efforts to share the voices of atomic bomb survivors and advocate for nuclear disarmament. This prestigious award recognizes how the testimonies of survivors have contributed to establishing the "nuclear taboo" and have strengthened the global movement toward a world free of nuclear weapons.
Nearly 80 years after the atomic bombings of Hiroshima and Nagasaki, the personal stories of survivors continue to highlight the inhumane nature of nuclear weapons. The catastrophic consequences of these weapons are not just a relic of the past but continue to pose a grave threat to global security. This award serves as a timely reminder of the importance of passing on the experiences of hibakusha and redoubling international efforts to achieve nuclear abolition.
We remain committed to working alongside Nihon Hidankyo in the ongoing fight for a nuclear-free world. We pledge to join forces with people around the world to ensure that a peaceful future free of nuclear weapons is passed on to the next generation.
October 29, 2024
Japanese Physicians for the Prevention of Nuclear War
ヒロシマ・ナガサキの原爆被爆80周年が目前に迫る中、世界情勢はかつてないほど緊迫しています。世界各地で紛争が続き、核兵器使用の懸念が日に日に増大しています。核兵器が故意であれ事故であれ使用され、ヒロシマ・ナガサキの惨禍が繰り返されるのではないかという懸念が世界に暗い影を落としている一方で、自国を守るためには核抑止力が必要であるという声も一段と大きくなっていくことに深い憂慮を憶えます。
人々の健康と生命を守ることを使命とする医師・医療従事者として、われわれは非人道的な核兵器がいかなる人や国に対しても使用されることを許してはなりません。われわれには医師として核兵器廃絶に真摯に取り組む責任があります。
世界医師会(WMA) は、1998年に「核兵器に関するWMA声明」を採択し、その後も2008年、2015年、2018年に修正を行っています。その声明でWMAは、医師の使命としてすべての国々に対して核兵器禁止条約に署名、批准ないし同意し忠実にそれを実行してゆくよう呼びかけています。そして核兵器禁止条約への参加と実施を含めて、核兵器の禁止と廃絶に直ちに取り組むよう各国政府に働きかけることを要請しています。
核兵器のない世界を実現するためには、地球上のすべての国が協力することが不可欠です。われわれは、唯一の被爆国の医師として、直ちに核兵器廃絶に向けて誠実に取り組むよう強く求めます。
2024(令和6)年10月7日
IPPNW日本支部
2022年2月24日、ロシア軍がウクライナに侵攻した。侵攻の最初期には、チェルノブイリ原発の武力による制圧が行われた。ロシアのみならず、複数の国の政治指導者から核兵器使用も辞さない構えが示唆されている。
このような事態を、戦争での原爆という兵器による被爆の経験、ヒロシマ・ナガサキの経験を持つ日本の医師としては断じて許すことができない。
いつ核兵器が使われてもおかしくない冷戦の時代、IPPNW設立を米国のバーナード・ラウン(ハーバード大学心臓学教授)と共にけん引したのは、ソ連(当時)のエフゲニー・チャゾフ(ソ連心臓学研究センター所長)であった。彼らは2021年に亡くなったが、年が変わりほどなくしてこの事態だ。
戦争という「外交」は、今必要な被ばく医療や放射線被ばくの研究を断絶する/停滞させる可能性がある。
冷戦が終わった現在も「いつ核兵器が使われてもおかしくない」時代が続き、明日明後日にでも核兵器が使われるのではないかという状況が現実にあることを我々は深く憂慮し、引き起こした者たちに強く抗議する。
各国の医師がこの思いを共有し連動すること、そして、このような事態を政治家たちが速やかに収拾することを我々は求める。
2022(令和4)年2月28日
IPPNW日本支部
<English Translation>
Russian forces invaded Ukraine on February 24, 2022. At the very beginning of the invasion, the Chernobyl nuclear power plant was captured by force. Political leaders not only in Russia but also in some other countries have implied the possible use of nuclear weapons.
Japanese physicians, who have/inherit the experience of the atomic bomb attacks in Hiroshima and Nagasaki in wartime, cannot tolerate the current situation.
In the Cold War period, when nuclear weapons could be used at any time, Dr. Evgueni Chazov (the director of the Moscow Cardiological Center) of the Former Soviet Union, together with Dr. Bernard Lown (Harvard University cardiology professor) in the United States established IPPNW. Soon after they passed away in 2021, the world is now confronted with this serious situation.
The "diplomacy" by means of war could lead to discontinuation or stagnation of radiation medicine and research on radiation exposure that is needed today.
We are deeply concerned that, even after the Cold War was over, we are still living in the period when nuclear weapons could be used at any time and the situation that nuclear weapons could be used tomorrow or the day after tomorrow is the reality. We strongly protest against those who have caused the current situation.
We call on doctors in each country to share this thought and work together. We urge politicians to promptly get this situation under control.
February 28, 2022
Japanese Physicians for the Prevention of Nuclear War