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おかあさんが知っておきたい 子どもの病気(外科編)

目次

3.血便

便に血が混じることもこどもではそれほど稀ではありません。子供の場合にはおとなと違って悪性のものはほとんど考えなくてもいいのでその点だけは気楽です。でも中には緊急を要する病気も潜んでいますので注意は必要です。(表3)

表3 血便をきたす、こどもの病気
赤みのある血便
赤みのある血便
裂肛(切れ痔)
結腸ポリープ(若年性ポリープ)
腸重積症
メッケル憩室
クローン病 潰瘍性大腸炎
腸捻転 重複腸管
黒 い 血 便
胃十二指腸潰瘍
食道静脈瘤
胃食道逆流症
異物
鼻出血

どんな点に注意を払ったらいいでしょうか。まず、血液の量と血液の色、それから便に混じっているのか周りについているだけなのか、粘液が含まれているの かなどが注意点です。その他前にも述べましたように、腹痛や腹満、嘔吐、顔面蒼白、ぐったり、熱などの合併症状があるかどうかももちろん大切な点です。年 齢にもよりますが、乳幼児での一番頻度の高い血便は裂肛、すなわち「切れ痔」です。便秘の後や大きなウンチをした後に赤い血液が便の周りにつくとか最後に ポタッと出る、紙に付くといった形で顕れます。肛門をよく見ると時計に例えるとちょうど12時方向に鶏のとさかのような「いぼ」ができていることが多いよ うです。これは「みはりいぼ」といって裂肛のしるしです(図2)。消炎剤を含んだ軟膏を使う程度で、あとは便の調子を整えるだけでほとんど治ってしまいま す。

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図2 みはりいぼ


そのほかの血便の原因として大きい児の場合、ポリープ(若年性ポリープ)やメッケル憩室、クローン病、潰瘍性大腸炎などの病気も考えなければなりませんが、ここでは緊急性のあるものとして乳幼児に頻度の高い腸重積症について説明します。
腸重積症は年齢的には生後6ヶ月から2歳頃までに多く見られます。腸は内容物を肛門に向かって送り出すために口側から順々に肛門方向に向かって収縮運動 をおこなっています。これをぜんどう蠕動といいますが、この運動が何かの刺激で強く起こったとき、口側の腸自体が肛門側の腸の中に吸い込まれたようになる ことがあります。これが腸重積症です(図3)。

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図3 腸重積症


吸い込まれた腸は腸間膜も一緒に入っていますのでそこにある血管が締め付けられ、血行障害となります。そして出血や時間が経てば腸の壊死が起こるわけで す。ふつう吸い込まれたときに激しい痛みを伴いますので、こどもは火のついたように泣きます。その後腸の動きにあわせ、周期的にいわゆる陣痛のような腹痛 (疝痛発作)をきたし、そうこうする内に肛門からイチゴゼリーのような粘液血便を排便します。当然子どもの全身状態は不良となり、ぐったりしておなかを押 さえるとすごく痛がり、またおなかがふくらんできます。腸が壊死になりかけたり、なってしまったらもちろん直ちに手術になりますが、血便の段階では手術を せずに、肛門から造影剤や空気を注入して、吸い込まれた腸管を元に押し戻すことができます(図4)。

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図4 腸重積症の注腸整復


これを注腸整復といいますが時期にもよりますが9割はこれで治すことができます。この年齢の子どもが周期的に異様な泣き方をした場合はやはり早めに病院 にかかることが大切です。腸重積症は大部分が小腸と大腸の移行部、回盲部を中心として起こりますが、子どもではこの部にリンパ装置が発達しており、風邪や 腸炎でこれが腫れることが刺激になるのではないかとされております。でも再発などを繰り返す腸重積症の中には時にここにポリープや憩室があることにより腸 重積を引き起こしているケースもあります。この場合はもちろん手術で原因となっている病巣を取り除く必要があります。


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