2 皆さんは、救急医療と災害医療の違いをご存じですか?どちらも急病や重病の患者さんを素早く手当てする医療ですが、最も大きな違いは、患者さんと医師・看護師の人数比率です。救急医療では、1人の患者さんに対して複数の医師や看護師がチームで対応します。しかし、災害医療では、1人の医師や看護師が数十人から数百人の患者さんを診ることがあります。 災害医療では、目の前にいない患者さんのことも考えながら医療を行う必要があり、そのため特別な訓練が必要です。災害派遣医療チーム(DMAT)に所属する医師や看護師、業務調整員は、災害現場で1人でも多くの命を救うために、普段から特別な訓練を受けています。 最近では、地震、台風、洪水などの災害時に「これまで経験したことのない○○」「想定外の○○」という言葉をよく耳にします。この本を通じて、皆さんが災害医療の仕組みを理解し、災害時に私たちと一緒に協力して活動できるようになることを願っています。広島大学大学院 救急集中治療医学大 下 慎一郎令和6年9月9日はじめに
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