守る命つなぐ希望 災害時に役立つ基本知識と最先端技術
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数者患26図18 ECMOを使用した重症新型コロナウイルス感染症患者の治療成績    新型コロナウイルス感染症が発生してから、何度もアウトブレイクを繰り返しながら、急速に患者数が増加してきたことが分かります。残念ながら多くの患者さんが死亡しましたが、日本における生存率は66%であり、これは欧米の生存率(40~50%)よりも優れた成績でした。   日本COVID-19対策ECMOnet(https://crisis.ecmonet.jp/、2023.9.10アクセス)欧米の生存率■■■■■■日付図■■日本の生存率■■■新型コロナウイルス・パンデミックは長期間にわたり、すでに5年が経過していますが、今でも新型コロナウイルスによる重症呼吸不全患者は発生しています。過去の経験から、新興再興感染症は、5年に1回くらいのサイクルで大流行していますので、また次の新たなパンデミックが発生するのは、あまり遠くない未来かも知れません。私は、医療福祉調整本部の任務と、広島大学病院の医師としての任務を、長期間兼任し生存者死亡者治療中生しました。広島の病院の平常時の診療能力を大きく上回る数の重症呼吸不全患者が発生したため、広島県では災害医療体制に準じた医療福祉調整本部を設置しました。すべての患者さんを外来に来た順番に診察して、順番に入院させていると、ECMOや人工呼吸器が不要な患者さんで病床が先に埋め尽くされ、ECMOや人工呼吸器が必要な患者さんが入院する場所がなくなってしまう恐れがあったからです。医師一人一人は、通常、目の前にいる患者さんしか見えませんので、広島県は「鳥の目」で広島県内の最重症患者を見つけ出し、患者さんの重症度に応じて、適切な病院へ転送する必要性があったのです。この体制により、広島県内のECMOが必要な重症呼吸不全患者さんを、広島大学病院へ集約化し、全員受け入れて治療することができました(図19)。

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