守る命つなぐ希望 災害時に役立つ基本知識と最先端技術
28/36

図16 ECMOの概観    ECMOは患者さんの左側にある機械のことです。患者さんと2本の管で繋がっていて、ものすごい勢いで血液を循環させています。ECMOを適切に使いこなすためには、この機械の操作だけでなく、その周囲にある人工呼吸器・血液透析・昇圧薬・麻酔薬・抗菌薬・栄養剤など、さまざまな医療機器や薬品を適切に使いこなさないといけません。このため、長期にわたる十分な訓練が必要なのです。ECMOECMO人工呼吸器人工呼吸器24抗菌薬抗菌薬栄養剤栄養剤昇圧薬昇圧薬麻酔薬麻酔薬血液透析血液透析そこで重要になるのが体外式膜型人工肺(ECMO)です(図16)。ECMOは心臓の中とそのすぐ近くにある大血管にそれぞれ管を入れ、血液を体外に出して酸素を吹き込み、二酸化炭素を取り除いて再び体内に戻す装置です。1分間に全身の血液がほぼ全部入れ替わるくらいの早さで、血液の出し入れを行います。これにより患者さんは肺で呼吸をまったくせずとも、体内に十分な酸素が供給され、不要な二酸化炭素が除去されます。そして、破れた肺胞上皮が再びくっついて、傷が治るのを待つわけです。しかも、患者さんが重症化して人工呼吸器を必要とするようになったら、なるべく早くECMOが必要かどうかを判断する必要があります。ECMO開始前の人工呼吸期間が長いほど、生存率が低下するからです(図17)。しかし、ECMOは取り扱いがかなり難しく、日本で、重症呼吸不全に対して本格的に使用され始めたのは、H1N1インフルエンザの流行時期からです。つまり、日本におけるECMOの歴史は、わずか15年くらいしかないのです。当時、海外での生存率が60~90%だったのに対

元のページ  ../index.html#28

このブックを見る