23図■■ff■■図15 肺炎と急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の違い A 肺炎における肺胞:肺胞の中には肺炎の原因となっている病原微生物(細菌・ウイルス)が存在し、この炎症によって、肺胞内に浸出液と呼ばれる液体がたまっています。この液体がレントゲン・CTで白く写って見えます。 B 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の肺胞:H1N1インフルエンザや新型コロナウイルス感染症では、肺胞内に病原微生物がいるかどうかよりも、肺胞上皮が損傷(壊死)して、その修復のために過剰な線維芽細胞が増殖していることが大きな問題です。線維芽細胞の増殖はしばしば止まらなくなり、肺胞内腔が線維芽細胞で埋め尽くされていきます。ff■■東呼吸器症候群)でも見られました。特にH1N1インフルエンザは日本にも大きな影響を与え、インフルエンザによる死亡リスクが認識されるようになりました。しかし、新型コロナウイルスの影響はそれ以上で、医療の通常の対応能力を超えるほどの医療ニーズが発生し、災害医療の要素を含んでいました。風邪は、鼻や喉の上気道にウイルスが付着し、炎症を引き起こす病気です。肺炎は、ウイルスや細菌が肺に入り、肺胞に炎症を起こす病気です。一方、H1N1インフルエンザや新型コロナウイルスは、通常の肺炎と異なり、肺胞上皮を損傷(壊死)させます(図15)。肺胞は損傷を修復するために線維芽細胞を増やし固めますが、これにより正常な肺胞までも硬くなり、呼吸が困難になります。軽度の損傷では息切れ程度で済みますが、重度の場合は急性呼吸不全に陥ります。しかも、線維芽細胞は自発呼吸や人工呼吸器の使用でさらに増殖し、完全に元に戻す薬もありません。
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