11図6 トリアージの重要性 もし、目の前にいる患者さんから治療を始めてしまった場合、もしかすると大勢いる患者さんの中にもっと重症の患者さんがいて、治療を待ちきれずに死亡してしまうかもしれません。もし治療する順序を変えていたら、両方とも助けられた可能性があります。このように、トリアージは患者さんをまず「鳥の目」で迅速に重症度評価して、その後「虫の目」で詳細に評価します。トリアージは「命の選別だ」「選ばれなかった人がかわいそう」と感じるかもしれませんが、トリアージは決して「命の選別」ではなく、限られた医療資源を効果的に使うための方法です。どの色に分類されたとしても見捨てるわけではありません。軽症の患者さんにエネルギーを使いすぎて、重症の患者さんの治療が間に合わなくなる事態を避けるため、医療提供の「傾斜配分」をするためのヒントとして、トリアージを活用します。つまり、赤タグの患者さんにより多くのエネルギーを注ぎ、緑タグの患者さんには少な目のエネルギーを注ぐといった具合です(図6)。このように、災害医療ではキャパシティを超えないようにするための工夫や訓練、そして組織化と役割分担が重要です。災害時には、一人でも多くの命を救うために、平常時からの準備が欠かせません。
元のページ ../index.html#15