守る命つなぐ希望 災害時に役立つ基本知識と最先端技術
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DMATの役割6このような組織構造は、普段の会社でも見られるかもしれません。しかし、災害時には、普段の仕事とは異なる組織を迅速に作り上げ、与えられた役割を各自が遂行する必要があります。そのため、平常時の医療体制から災害時の医療体制へと迅速に切り替えられるよう、日頃から訓練を行っておくことが重要です。DMATは、災害時の医療体制作りを普段から訓練している専門チームです。医師、看護師、薬剤師などで構成され、災害時には迅速に現場に派遣されます。医師や看護師は、通常は救命センターや集中治療室に所属していることが多いですが、内科や外科のDMAT隊員もいます。また、業務調整員は薬剤師、理学療法士、臨床工学技士など複数の職種で構成されています。つまり、DMATは救急医療に特化した人だけでなく、災害医療を志す人なら誰でも訓練を積んで参加できるのです。DMATは、阪神淡路大震災(1995年1月17日)の教訓から誕生しました。この震災では、初期医療体制の遅れによって、本来避けられたはずの災害関連死が500名以上に上りました。その際、初期医療体制の不備や情報共有の遅れなど、いくつかの課題が浮き彫りになりました(表1)。これらの課題を解決するために、DMAT、災害拠点病院、広域災害救急医療情報システム(EMIS)、広域医療搬送計画などが設立・策定されました。DMATは、医師1~2名、看護師2名、業務調整員1名のチームで編成されることが多いですが、災害の規模や種類によって組み合わせを変更します。DMATの活動は「自己完結型」と言われており、災害医療中の衣食住はすべて自分たちで手配します。危険・安全の判断も自分たちで行い、自分の身は自分で守る方針で活動します。災害現場では気

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