11 ③肺塞栓症 … 肺塞栓症とは、下肢(主として鼠そけいぶ径部からふくらはぎのあたり)の深部の太い静脈(深部静脈)内にできた血栓が、何らかのはずみで静脈壁から剥がれて血流にのって移動して、心臓(右心房、右室心)を通り抜けて肺に通じる動脈内に詰まってしまう疾患です。血栓を形成しやすいのは、下肢の骨折を伴うようなけがや大手術のために長期間臥がしょう床状態であった場合、長時間座った状態で脚の静脈の流れが悪くなった場合、血栓ができやすい疾患に罹患している場合、肥満などがあります。「エコノミークラス症候群」という名称も肺塞栓症のことです。これは、国際線などで長時間にわたり客席に座っていると、脱水の影響なども加わって、下肢の静脈内に短時間で血栓ができることがあります。そして、席から立ちあがるなどをきっかけに、その血栓が静脈壁から剥離して、肺に通じる動脈内に詰まることにより生じます。災害時などで、避難所代わりの自家用車内で生活をした場合も、狭い車内に長時間座っていることが多くなり、下肢の静脈に血栓を形成しやすく、肺塞栓症になることがあります。症状は突然生じる息苦しさ、強い胸痛、冷汗やめまい、失神などで、肺に通じる太い動脈(左右の肺動脈本幹)に大きな血栓が詰まった場合には、血液を全身に送ることができなくなり、短時間でショック状態や心停止となることもあります。
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