191 病気について… 大動脈解離や大動脈瘤破裂は大動脈におこる病気です。大動脈は心臓の左心室から全身へ血液を送り出す動脈の本幹で人体最大の血管です。まず左心室から頭側へ向かった後に(上行大動脈)、左後方へ大きく曲がり(弓部大動脈)、その後背骨に沿って足側へ下っていきます(下行大動脈)(図1)。大動脈の壁(厚さ2~3mm)…は内膜、中膜、外膜の3層構造になっています。血管の最も内側にある内膜は直接血流や血圧にさらされる部分で、バリア機能を持っています。中膜は内膜と外膜の間に挟まったスポンジのような部分で、大動脈壁のしなやかさを維持しています。血管の最も外側の外膜は丈夫で大動脈壁の強度を維持しています。… 加齢に加えて、高血圧や喫煙などの生活習慣病が重なると全身の血管は硬くなり、これを動脈硬化とよびます。大動脈では動脈硬化が進むと内膜から中膜が弱くなります。大動脈の壁に血管の内側から血圧のストレスがかかり内膜の一部が破れると、血液が中膜に入り込んできます(破れた部分をエントリーと呼びます)。中膜はスポンジ状なので、容易に破壊されて血液はどんどん流入していき外膜にも圧力がかかります。外膜は比較的強いため、外膜1枚でなんとか踏みとどまります。このように、大動脈の壁に血豆が広がって外膜だけで踏みとどまっている状態が、“大動脈解離”という病気です(図2左)。血豆の空間は解離腔(偽腔)と呼ばれます。大動脈解離が起こると破れた部分に激烈な痛みが生じます。エントリーが上行大動脈に発生すると突然の胸痛として自覚し、さらに血豆がどんどん弓部大動脈や下行大動脈へ広がっていくと、痛みは喉もとから次第に背部痛にまで広がっていきます。エントリーが
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