知っておきたい薬物の乱用・依存に関する基礎知識
6/41

33Ⅱ 医療法人せのがわの所在する広島市安芸区には五つの中学校があります。長年にわたって薬物依存者を診療してきた立場から、私は安芸区保健センターからの依頼で、毎年一校ずつ薬物乱用防止教室の講師として、最初にこの図を提示し、実例を交えながら、直接中学生に語りかけてきました。 薬物の乱用は多くの場合、若者の問題です。首都圏の進学校の男女高校生を対象にした意識調査の結果では、11、12%はたとえ覚せい剤でも「一度位ならやってみたい」と思っているのです。ところが、一度、自由意志に基づく選択として、依存を引き起こす作用をもつこれらの≪依存性薬物の乱用≫を経験すると、比較的容易に≪薬物依存症≫の状態になって≪薬物摂取中心の生活≫を送ることになるのです。 さらにわが国で流行しているシンナー・大麻・覚せい剤は比較的高率に≪薬物精神病≫を引き起こして、幻覚・妄想等の病的体験に支配された≪病的人格≫となって、まともな判断ができなくなります。 <依存>というのは、依存的行動の学習ですから、自転車の運転や泳ぎのように一度覚えたら一生忘れないのと同様に、忘れ去ることはない一生もの医療法人せのがわKONUMA記念広島薬物依存研究所(医療法人せのがわKONUMA記念広島薬物依存研究所)(薬物使用の抑制不能・薬物探索行動・禁断症状・ケア引き出し行動)アルコール精神病・有機溶剤精神病・覚せい剤精神病・大麻精神病乱用による健康障害・社会的問題を経験しても、止められない薬物図表2.薬物の乱用薬物の乱用によって奪われる若者の「自由「自由と「尊厳「尊厳と「信頼「信頼そ「未来「未来「信頼」そして「未来」「未来」「自由」「自由」と「尊厳」自由意志に基づく行動の選択依存性薬物の乱用自由意志に基づく行動の選択; 依存性薬物の乱用薬物摂取中心の生活; 薬 物 依 存 症薬物による捕らわれの人生;薬物乱用人生薬物による捕らわれの人生; 薬 物 乱 用 人 生「尊厳」と「信頼」病的人格; 薬 物 精 神 病幻覚妄想に基づく病的な行動幻覚妄想に基づく病的な行動規に≪脱法ドラッグの乱用≫が0.2%で登場しました。 この≪喫煙・飲酒・薬物乱用に関する全国中学生意識・実態調査≫では、中学生による<喫煙>、<大人の居ないところでの飲酒>、あるいは<一人で飲酒>は有機溶剤、さらに強力な<大麻><覚せい剤>の乱用への入門薬になっている、すなわち踏み石を踏むようにドンドンと強力な薬物の乱用へと進行しやすくなるという「踏み石理論」が証明されております。薬物乱用によって奪われる若者の「自由」・「尊厳」・「信頼」そして「未来」

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る