知っておきたい薬物の乱用・依存に関する基礎知識
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33期はこのような人生上の課題と、<内から生ずる本能的欲求>との狭間で葛藤状態におかれている≪人生上の疾風怒濤の時期≫であり、心理的に不安定な存在なのです。 幼児期には親の言うことを聞いていたのですが、青年期は自我が芽生え、親や社会が「ダメ、危険だから」と禁止していることにも、自分で試してみなくては、なかなか納得できない冒険心に富む年代です。そういう中から色々な発明や発見もなされるのです。青年期の冒険には、一時的な疾病逃避、さぼりといった<自我収縮的冒険>もあれば、喫煙、飲酒など<自我拡張的冒険>もあります。これらの冒険が進行して病理的な段階では、非社会的あるいは反社会的行動として、何らかの治療的対応が必要となります。種々の薬物乱用は<自我収縮的な非社会的行動>としても、<自我拡張的な反社会的行動>としても、見られるものです。社会では、非社会的行動には比較的同情をもって対応することが一般的ですが、普段多くの若者と接している筆者からすれば、反社会的行動にも同じく、もっと愛情をもって対応して欲しいものです。 現在、わが国では覚せい剤や大麻、違法ドラッグの乱用が、厳しい取締りや処罰の強化に対しても、抵抗性を示し長期化する傾向がうかがわれます。その理由としては、これらの薬物の入手可能性が高いことも一因ですが、やはり「都市化現象」など、<現代社会の持つ病理性>が大きな背景になっていると思われます。 わが国においては、1960年代の高度経済成長の影響による、生活水準の向上、都市化現象など、社会の構造的変化が指摘されております。特に、次代を担う青少年の成育・生活環境においては、図表6に示すように大きな変化がもたらされているのです。これらの変化が青少年に≪生きづらさ≫をもたらしていると思われます。 これまでの二世代にわたる≪暖衣飽食の時代≫の後に襲ってきた不景気にⅤ薬物乱用予備軍を育む現代社会〜青少年を取り巻く生活環境の変化〜

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