21図表22.脱法ハーブの神経毒性 このように違法ドラッグの乱用者では、乱用の初期段階で依存状態になる以前から激しい精神錯乱状態を呈する事例が多いので、覚せい剤よりも使用者にもたらす影響が強烈であるといえると思います。 医薬品を開発する場合には、このような強い神経毒性が認められれば、その時点で医薬品としての使用は到底考えられないのですが、密売組織は安全性を全く無視し、類似の幻覚作用のあるこのような違法ドラッグを浴用剤やお香などとして平気で販売しているのです。大麻やLSD、MDMA、覚せい剤など多剤乱用経験を有している者が多く、8割を占めること、②使用後、比較的短期間に、急性中毒による錯乱状態あるいは激しい興奮状態などのため、110番通報・保護される事例が多いこと、③そのため措置入院の比率が30%と高いこと、④記憶不明確、ないし疎通性不良の者が20例中13例(65.0%)と多いこと、⑤「赤い光線が見える」、「床から手が10本見えた」などの幻視体験、「アダルトビデオの写真が妻である」など人物誤認が多いこと、⑥受診時に被刺激性・易怒性の亢進している者が多いこと、⑦顔面・脳の違和感や激しい頭痛を訴える者が多いこと、⑧横紋筋融解症1名、踵骨骨折2名や上肢・胸部の傷痕などの外傷を有する事例が多いことなど、があげられます。2)いわゆる脱法ハーブの有する神経毒性について マウスの脳は薄い切片にして適当な培養液の中に浸しておくと、神経細胞と神経線維のネットワークを保持した生きたままの状態で、生理学的な実験に使用できるのです。ところが、その培養液の中に脱法ハーブの成分を添加すると、2時間後には右の写真のように神経細胞が破壊されてしまうくらいの激しい細胞毒性を表します(図表22)。
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