②慢性効果 大麻による<慢性の身体障害>としては、煙の刺激による慢性の喉頭炎・気管支炎、精子の減少、月経異常のほか、白血球減少に伴う免疫力の低下などが報告されています。また、男性の大麻乱用者の場合、図表20のように、精子の構造やその運動性に明確な異常がみられたり、男性ホルモンであるテストステロン含有の低下をみとめることがあります。2919左上図:タバコ喫煙し,少量のアル左上図タ喫煙し,少量のアルコールも摂取するヒトより得られた正常な形の精子図表20.大麻吸煙のヒト精子に及ぼす影響(山本,2005)右下図:大麻常習者より得られた異常(非卵形)および未熟な形の異常(非卵形)および未熟な形の精子 一方、<慢性の精神障害>としては幻視、幻聴や妄想など精神病症状が大麻を使用していない時にも持続して見られる「大麻精神病」が重要です。海外留学中にかなり濃厚に使用した場合には、学業から落ちこぼれて、ほとんど普通の会話も成り立たないような病的状態で帰国する例も見られます。このような場合には、治療によって幻覚や妄想が治まっても、その後に感情の平板化、関心・自発性の減退、思考内容の貧困化などの<無動機症候群(amotivational syndrome)>を長期にわたって呈する「人格変化」が特徴的です。 図表21は大麻を乱用した患者が治療によって幻覚妄想が治まった時点で書かされた反省文です。高校とデザイン学校を卒業しているのに、漢字が全くみられないです。また簡単な文章しか書けず、「知的障害」を引き起こしているのがよく分かります。今は亡き徳井達司先生のお話では、ある乱用者の親によると、「本当にあれっと思うくらい幼稚で、漢字で全したりしていると、bad tripといって、急激に錯覚・幻覚、不安感・恐怖感を伴う妄想が発現して、異常な興奮・錯乱状態を呈する強い反応が治まらないで、「急性精神病」として、緊急に警察に保護されたり、友人に伴われて精神科病院に受診したりするのです。
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