知っておきたい薬物の乱用・依存に関する基礎知識
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   入院中のモルヒネ依存の患者さんの場合ですと、48時間目までは身動きすら大変であっても、この後は動けるので、色々な理由を付けて外出を要求してくるのです。要求が通らないとなると、時には病棟の天窓のガラスをはずして外出した患者も居るくらいで、自ら止め続けることは非常な困難が伴うものです。   モルヒネは「がん疼痛」に対する治療薬として有用なものであり、WHOが推奨する<がん疼痛治療法(三段階鎮痛薬選択順序)>を遵守していれば、薬理学的に乱用に至ることはないことが証明されておりますので、安154.ブタンガス吸引による害 最近では、シンナー等有機溶剤の乱用流行が治まるにつれて、使用規制のかかっていない卓上コンロやガスライター用の≪ブタンガスの乱用≫が時々見られるようになりました。ブタンガスを吸引していわゆるラリった状態で、自宅の階段から転落して、頭部外傷のため脳外科で手術を受けた事例もあります。5. アヘン系麻薬依存にみられる禁断症状1)モルヒネによる身体依存形成後の禁断症状の発現経過   日本猿にモルヒネを毎日6 mg/kg皮下注射して14日間経つと、モルヒネに対する身体依存が形成されます。モルヒネを注射した直後には、ゆったりとして平常の状態ですが、12時間経過して血中のモルヒネ濃度の低下に伴って、モルヒネの「禁断症状」が発現してきます。全身の毛が立ち瞳孔が散大して牙をむき出しイライラ感が高まってきます。そして、下痢・腹痛・嘔吐でグロッキー気味となります。24時間後には禁断症状は更に進行して、皮膚の中を虫がムズムズ動き回るような異常感覚がつのって非常に苦しい思いをします。人の場合も全く同じで、頭を壁にぶつけたり、苦しい思いを訴えて、モルヒネの注射を懇願する状態となります。このような禁断症状も48時間目が一番のピークです。この後は急速に回復して、食欲もでて夜間も眠れるようになります。しかし、今度は無性に「渇望感」が増してきます。

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