知っておきたいアナフィラキシーの正しい知識
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1011てハチが飛び去るのを待ち、ゆっくり巣から離れます。大声で騒いだり、手で払ったりする行動は危険です。一旦ハチの攻撃を受けると攻撃に参加するハチは増えるので一刻も早く現場から離れます。また、攻撃を受けにくい色彩、身なりも大事です。ハチは黒色に対して攻撃をするため、黒い着衣やひらひらするもの、黒いサングラスなどは攻撃を受けやすく、カメラや長靴など黒くて動くものも危険です。ハチに刺されないようにするためには、長袖で白っぽい服装をし、頭部は攻撃を受けやすいため帽子をかぶり、軍手などをはめて露出部分を少なくします。さらに、匂いもハチを刺激するため、ヘアスプレーや香水などの化粧品はつけないようにします。ハチが室内や車内に入ってきた場合は、窓を開けて出て行くのを待ちます。ハチは明るい方へ向かう性質があり自然に外に出て行くため、決して叩いたり追いかけ回さず冷静に対処します4)。 ハチに対するアレルギーの検査としては、血液中のハチ毒に対する特異的IgE抗体の検査やハチ毒を用いた皮膚テスト(プリックテストなど)があります。ハチ毒に対する抗体の量は、例えその値が低い場合であっても再度刺された場合にアナフィラキシーを起こすことがあります。また、ハチアレルギーがあり、林業関係者などハチ刺症が避けられない場合は、ハチ毒そのものを用いた減感作療法も考慮されます。アレルゲンに対して抗体が作られる現象を感作と呼び、アレルゲンを少量ずつ皮膚に投与し、アレルゲンに対する過敏な状態を徐々に「慣らす」治療を減感作療法といいます。一般に花粉症などのアレルギーに対して行われていますが、ハチ毒を用いた減感作療法も有効性が認知されています。しかし、日本では健康保険が適応されないこと、長期間の治療を要すること、治療用のハチ毒を海外から輸入しなければならないこと、実施できる施設が限られていることなどの問題点があります3)。 薬物に対するアナフィラキシーに対しては、原因となる薬物を避け、交叉反応のない代替薬を使用する必要があります。薬剤により皮疹などの異常がみられた場合には薬剤アレルギーを疑い医療機関への受診が勧められます。また、薬剤アレルギーがある場合には、医療機関を受診する際や薬局で市販薬を購入する際に、アレルギーの内容を確実に伝える必要があります。もし、代替薬の使用ができない場合には、医師の指示の上で減感作療法が有効な場合があります。薬剤の減感作状態は薬剤を使用している間は維持されますが、一旦中止すると薬剤に対する感受性が戻るため、中止後に再び同じ薬剤を使用する場合には再度減感作療法を実施しなければなりません。

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