知っておきたいアナフィラキシーの正しい知識
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2021写真2. 救急外来に搬送された時の状態アナフィラキシーの一例治療はアドレナリンの投与です。また、アナフィラキシーでは、血管から水分が外に逃げるために脱水になりやすく、さらに血管が拡がるために血圧の低下を招きやすい状態となります。これを改善させるためには、十分な点滴を行います。その他にステロイド(人の副腎で作られるホルモン)や抗ヒスタミン薬(アレルギーの原因物質であるヒスタミンを抑制する薬)の投与を行います。ステロイドは、アドレナリンと違いアナフィラキシーに対して即効性に欠けますが、前述の二相性反応(初期症状が改善した後に症状が再び出現する反応)を抑える作用があるとされています。抗ヒスタミン薬も即効性はありませんが、皮膚症状の改善に効果があります。アナフィラキシーの初期治療後は、医療機関に入院して経過観察を行う必要があります5)。 実際のアナフィラキシーの例を示します。 ある中年の男性が、山中でハチに刺された後にめまいを自覚し、119番通報しました。救急隊が現場に到着した時には、強い呼びかけでどうにか目を開ける程度の反応しかなく、血圧が低下しており、顔や胸、手足に広範なじんま疹、紅潮が認められました。ショック状態と判断され、酸素を投与されながら搬送されました。病院の救急外来に到着した時、血圧の低い状態は続いていましたがなんとか会話ができ、車に乗る前にハチに頭を刺され今回で2回目ということが分かりました。2回目のハチ刺されで、じんま疹と血圧の低下を認めたことから、ハチ毒によるアナフィラキシーと診断されました。直ちにアドレナリンの筋肉注射が施行され、点滴治療とステロイド、抗ヒスタミン薬の投与が行われました。初期治療の反応性は良好で、血圧は上昇し皮膚症状も消失しました。経過観察を目的に入院し、再度症状が出現することがないことを確認後、入院翌日に退院となりました。今回、重篤なアナフィラキシーを発症しており、再度ハチ刺された場合はアナフィラキシーが重症となり得るため、エピペン®0.3mgが処方されました。9

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