知っておきたいアナフィラキシーの正しい知識
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1617図3. アドレナリン自己注射製剤「エピペン®」アドレナリン自己注射製剤「エピペン®」を処方されている場合下を示す症状がある場合には、横になり(仰向け)嘔吐がなければ毛布などを用いて両足を上げます。足を上げることで心臓に戻る血流が増加するために血圧の上昇が期待できます。嘔吐が見られたり意識が悪い場合には、吐物を喉に詰まらせたり舌が気道を狭くし呼吸困難を起こす可能性があるため、横向きで寝かせ、応援や救急隊が到着するのを待ちます。 ハチ毒、食物及び薬物等に起因するアナフィラキシーの既往のある人またはアナフィラキシーを発現する危険性の高い人には、アドレナリン自己注射製剤である「エピペン®注射液0.3mgおよびエピペン®注射液0.15mg」の処方が考慮されます。エピペン®は、注射針一体型の注射器にアドレナリンという薬剤があらかじめ充填されたキット製剤です。アドレナリンは人の副腎で作られるホルモンで、心臓の働きを強め末梢の血管を縮めることで血圧を上昇させる作用があります。また、気管支を拡張する作用、粘膜の浮腫を改善する作用もあります。さらに、アナフィラキシー症状を引き起こす体内からの化学物質の放出を抑制する作用もあります。このように、アドレナリン投与は即効性かつ有効性のある最も優先すべき治療法です。 一方、ハチに刺された場合など症状が急速に現れることがあります。アドレナリンの投与が遅れた場合や、アナフィラキシーの進行が急激な場合にはアドレナリンの投与が効かないばかりか最悪の場合には手遅れとなってしまいます。致死的なアナフィラキシーショックを救命できるかどうかは30分以内のアドレナリン投与の可否が重要とされます。そこで、迅速なアドレナリン投与を行うためアドレナリン自己注射製剤「エピペン®」が開発されました(図3)。エピペン®は本人もしくは保護者が自ら注射する薬剤で、当初の適応はハチ毒に対するアナフィラキシーに対してのみでしたが、後に食物アレルギーや薬物アレルギーにも適応が拡大されました。処方する医師はエピペン®処方医師としての登録が必要ですが、処方される患者側も登録が必要となります。7

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