370杯1杯8杯(注)計算式は 500×1×1.3×10−5(注)=0.0065ミリシーベルト となります。 これまでは、放射能汚染された食品に関する食品衛生法上の規制はありませんでした。しかし、2011年3月17日、政府は福島第一原子力発電所の事故を受けて、放射能汚染された食品の取り扱いについて暫定規制値を設け、これを上回る食品は飲食しないように通知をしました。(暫定規制値には、原子力安全委員会が示した「飲食物摂取制限に関する指標」を採用しています。) 例えば、セシウム137の野菜、穀類などに対する暫定規制値は500ベクレル/kg、ヨウ素131の飲料水、乳製品などに対する暫定規制値は300ベクレル/kgです。500ベクレル/ kgのセシウム137が検出された飲食物を1kg食べた場合の人体への影響は、0.0065ミリシーベルト(注)に相当します。これをコップ一杯とした場合、500ベクレル/kgのセシウム137が検出された飲食物1kg胸のX線診断一年間の自然放射線量(年間・世界平均)実効線量係数(mSv/ Bq (ミリシーベルト/ベクレル)経口摂取・成人)放射能の単位であるベクレルから生体影響の単位であるミリシーベルト(シーベルトの 1/1,000)に換算する係数ミリシーベルトミリシーベルト0.0065ミリシーベルト0.052.4放射能汚染された食品を摂取した場合の人体への影響の例として2223 レントゲン博士により1895年にX線が発見されて以来、1896年のベクレル博士による放射能の発見、そして1898年のキュリー夫妻によるラジウムの発見が相次ぎ、人類は、この4年の間に行われた大発見により初めて放射線と出会うことになりました。ちなみに、これらの大発見には、第1回と第3回のノーベル賞が授与され、その栄誉が讃えられています。これらの発見以来、人類と放射線の関係が始まる訳ですが、実は生命と放射線の関係は、その遙か以前から始まっています。即ち、放射線は地球の誕生以来、環境中に存在し、生命は放射線の存在する環境の中で進化を続けてきました。最近の研究により、生命はこの進化の過程の中で、放射線や紫外線などが誘発するゲノムの損傷を修復したり、その損傷を排除することで、放射線や紫外線などが与えるダメージから回復するシステムを獲得してきたことが明らかにされつつあります。このシステムのことを“DNA損傷応答機構”と呼んでいます。 低線量放射線の人体影響は、未だ科学的に解明されていない部分があり、これが国民に多くの不安を与えています。今後、低線量放射線被ばくに対する細胞の応答機構の研究が進歩し、低線量放射線の人体影響の解明が進むことが期待されます。この小冊子では、紙面の関係でこの部分は紹介できませんでしたが、第2章「日常生活と放射線」でその一端を記載しました。ヒロシマは、分子レベルでの低線量放射線の影響解明の分野でも大きな役割を担っており、これらの研究成果を医療に応用することで、放射線障害で苦しむ原爆被爆者や世界の被ばく者の医療に役立てていきたいと考えます。平成23年9月広島大学 原爆放射線医科学研究所 所長神 谷 研 二放射線から身を守るには?外部被ばく外部被ばく防止の3原則を守ること●時 間:短いほど量は少なくなる●距 離 : 離れているほど量は少なくなる●遮へい : 遮へい物で放射線を遮ることもできる内部被ばく放射性物質の取り込みを減らすこと取り込んだ放射性物質を減らすこと放射能汚染された食品の取り扱いに関する規制おわりに
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