2021第5章放射線の安全基準クの品質改良、加工・強化などに利用されています。 厚みの測定:放射線の透過量から厚みを測定します。半導体加工:微細な半導体の加工に放射線が利用されています。非破壊検査:放射線の透過力を利用して、内部の傷や構造を調べることができます。 (3)農林水産業分野での利用品種改良:放射線をあて意図的に突然変異を起こし、有益な特性をもつ新しい品種を作り出す試みです。ナシ、キク、稲等で優れた品種が誕生しています。害虫駆除:放射線を利用し、不妊化の方法で特定の害虫のみを根絶する技術です。農薬を使わないため、環境や他の種類の生物に害を与えません。実際に、沖縄群島でウリミバエの駆除に成功しています。食品の保存:放射線を照射することによって貯蔵期間の延長と殺菌・殺虫などを行うことができます。日本ではジャガイモの発芽防止に使われています。(4)環境分野での利用排煙処理:火力発電所やごみ焼却炉から出る排煙に放射線を用いて、大気汚染物質を除去します。酸性雨の原因となる物質は、電子線を用いることで肥料に替えることができます。汚泥処理:排水や汚泥に放射線を利用して有害物質を分解・殺菌する技術の開発もすすめられています。 (1)放射線防護の3原則 私たちは自然界の中で常に放射線を浴びています。さらに、放射線は幅広い分野で利用され、私たちのくらしを豊かにすることに役立っています。しかし、その反面、ある程度以上の放射線を被ばくすると健康に影響を及ぼすことがわかっています。そのため、我が国では放射線作業に従事する人たちや、その周辺に住んでいる人たちを放射線から防護するための徹底的な安全管理が行われています。無用な放射線被ばくをなくすることが大切であり、特に外部からの放射線を軽減するために次頁の図に示した3原則があります。(2)放射線防護について 放射線防護を考えるとき、どの程度の放射線を受けると健康に悪影響がでるのか考える必要があります。そのため専門家の立場から放射線防護に関する勧告を行う組織が必要になり1924年国際放射線単位および測定委員会(ICRU)が設立され、その後国際放射線防護委員会(ICRP)となり、世界各国に放射線防護に関わる勧告を行っています。 ICRPでは、1年間の被ばく限度となる放射線量について①平常時では、公衆の線量限度は1ミリシーベルト、②放射線事故などの緊急時には20〜100ミリシーベルト、③その後の緊急事故後の復旧時は1〜20ミリシーベルトと定めています。また、放射線事故が起きた場合、緊急措置や人命救助など放射線作業に従事する人々については、状況に応じて、500〜1000ミリシーベルトまで制限を引き上げることもあります。
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