知っておきたい“腹痛(おなかが痛い)”のポイント
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10111. 感染性腸炎 ウイルスや細菌が腸管に感染することが原因となり、腹痛とともに下痢が主症状となります。発熱や嘔吐、さらに血便などの症状を認めることもあります。いわゆる食中毒も感染性腸炎の一種で、汚染された食物を摂取することで発症します。途上国旅行中や帰国後に発症した場合、特殊な微生物による感染性腸炎(細菌性赤痢、コレラなど)の可能性があるため注意を要します。感染性腸炎の治療は、一般的に脱水予防のための水分補給が主体となります。2. 虫垂炎 典型例ではみぞおちから臍にかけての痛みから始まり、数時間を経て右下腹部へと痛みが限局してきます。腹痛に伴い下痢や嘔吐を認めることは稀です。適切に診断・治療を行わないと消化管穿孔や腹膜炎をきたし重症化することがあるため早期に受診することが重要です。3. 腸閉塞症(イレウス) なんらかの原因により、腸管の内容物の通過が障害された状態を腸閉塞症といい、腸管の血行障害を伴う絞扼性イレウスと、血行障害を伴わない単純性イレウスに分類されます。通過障害により、吐き気や嘔吐、腹部膨満感を認め、排便や放屁が停止します。腹痛は単純性イレウスの場合は周期的に増悪・寛解する間欠痛で、絞扼性イレウスでは持続的な鋭い痛みを自覚します。腹部手術を受けたことのある方は本疾患の罹患率が高く、注意を要します。4. 過敏性腸症候群 各種検査で異常が認められず、腸の機能異常が原因と考えられています。慢性的(3か月以上)、反復性に下痢や便秘などの便通異常を伴う腹痛をきたし、ストレスで増悪することがあります。排便で腹痛が軽減する点が特徴的です。5. 消化性潰瘍 胃潰瘍と十二指腸潰瘍の総称です。胃潰瘍では食後に、十二指腸潰瘍では空腹時にみぞおちの痛みを自覚する傾向にあるといわれますが、食事との関連が不明瞭なこともあります。消化性潰瘍の成因として、胃内に生息しているヘリコバクター・ピロリ菌が重要視され、潰瘍を再発するケースでは積極的に除菌療法が行われます。また、解熱鎮痛薬の中には消化性潰瘍を誘発するものがある点にも注意を要します。6. 胆石発作 成人の10人に1人は胆石保有者と言われています。健康診断などにおける腹部超音波検査で胆石の存在を指摘された方が、みぞおちから右側腹部に腹痛を認める場合は胆石発作の可能性があります。典型例では、油ものを摂取して数時間以内に冷や汗を伴う強い激痛を自覚します。7. 膵炎 腹痛を訴えて病院受診したケースの約5%が急性膵炎と言われています。飲酒が契機となり発症することが多く、胆石が原因になることもあります。上腹部の激痛に嘔気・嘔吐、背部痛を高頻度に伴います。重症化した場合に致命率が高いため、早急に適切な処置を要します。腹痛をきたす頻度の高い消化器疾患

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