知っておきたい“腹痛(おなかが痛い)”のポイント
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胆石、胆道感染症、胆嚢がん、十二指腸潰瘍、急性肝炎、肝がん腸炎、腸閉塞、腸間膜動脈閉塞症虫垂炎、鼠径ヘルニア図2 腹痛の部位に特徴のある消化器疾患右季肋部心窩部左季肋部臍部回盲部(右下腹部)左下腹部下腹部胃食道逆流症、胃十二指腸潰瘍、胃炎、胃がん、膵炎、虫垂炎初期膵炎、膵石、膵がん、胃潰瘍鼠径ヘルニア、虚血性腸炎腸炎、S状結腸捻転89 腹痛のある部位に必ずしも痛みの原因となる臓器があるとは限りませんが、図2に示すとおり、おおまかに腹痛部位から原因疾患を推定することが可能です。腹部全体が痛いのか、それとも腹部の限局した部位が痛いのか、痛みの部位は診断において欠かすことの出来ない重要な情報になります。また、疾患によっては、時間経過とともに痛みの部位が変化することがあります。例えば虫垂炎の場合、初期にみぞおち付近に痛みを自覚し、徐々に右下腹部に痛みが限局してくることがあります。さらに、痛みの特殊な例として関連痛があります。これは、内臓での痛み刺激が脊髄神経に刺激を与え、臓器のある部位とは隔たった皮膚などの体表に限局的に痛みを感じるものです。胆石症では右肩、膵炎では左のみぞおちから背部にかけて、十二指腸潰瘍の穿孔では右肩に関連痛を認めることがあります。 消化器疾患による腹痛の場合、腹痛以外の随伴症状を認めることが多く、診断の手がかりとなります。随伴症状として認める頻度の高いものとして、嘔気・嘔吐、下痢、発熱、腹部膨満、吐血・下血、黄疸などが挙げられます。 腹痛の程度には個人差があり、痛みの程度だけで原因疾患の重症度を判断することは困難ですが、以下の項目が当てはまる場合には重症である可能性が高く注意を要します。 1. 腹痛が出現して短時間で激痛となる 2. 吐血・下血や黄疸、発熱などの随伴症状を認める 3. 腹痛が出現してから便や放屁がでない 4. 歩くと患部に響く 5. 体重減少を認める 6. 痛みのため睡眠から覚醒する これらで当てはまる項目が増すほど重症である可能性が高いため、早めの病院受診をお勧めします。腹痛部位と疾患随伴症状と疾患緊急を要する消化器疾患

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