腹痛の強さ腹痛の強さ食事摂取図1 腹痛と発症様式と増悪/寛解因子腹痛の強さ時間経過腹痛の強さ時間経過67食事摂取時間経過食事摂取時間経過a. 消化管穿孔・腹部血管病変c. 十二指腸潰瘍b. 胃潰瘍d. 胆石症 腹痛のため、病院を受診する原因疾患として最も頻度が高いのが消化器疾患です。しかし、腹痛をきたす消化器疾患は多種多様で、自然に治癒する軽症のものから、生命にかかわる重症なものまで幅が広く、診断が容易でない場合があります。診察医が迅速に正しい診断をして適切な対処をするために、腹痛に関する情報を正確に伝えて頂くことが重要な役割を果たします。消化器疾患による腹痛は、発症様式、部位や性状、随伴症状などからある程度、原因疾患を推定することが可能であるため、診断に際して以下のポイントが役に立ちます。 腹痛がどのように出現し、時間経過とともにどのように変化するかは疾患を推定する上で重要です。突然、ある瞬間を境に急激に痛くなった場合は、大動脈瘤破裂や大動脈解離、腸間膜動脈血栓症などの血管病変が第一に疑われます。消化器疾患でこのように急激な経過きたすことは比較的まれですが、消化管穿孔(消化管の壁に穴が開いて、消化液や食物などが消化管の外へ漏れ出す状態)では突発的な激痛から始まることがあります(図1a)。いずれにしても開腹手術を必要とするような緊急性が高い疾患の可能性が高いため、注意を要します。また、高齢者や肥満のある方は、概して痛みに対して鈍感となり、痛みの程度が軽くても重症な場合があるので注意が必要です。 食事や排便により腹痛が増悪または軽減する場合は消化管に原因がある場合が多いです。一般的に胃潰瘍では食事により腹痛が増悪する一方(図1b)、十二指腸潰瘍では食後に痛みが一時的に軽快することが多いといわれています(図1c)。排便や放屁により腹痛が軽減する場合、過敏性腸症候群など大腸に由来した腹痛が考えられます。また、胆石症による腹痛では、油ものを摂取後に腹痛が出現するのが特徴的です(図1d)。この他、体位で腹痛が軽減する場合があり、膵炎などの後腹膜臓器に原因がある場合は座位では前傾姿勢を、臥位なら胸膝位(膝を曲げて腹ばいになる)で痛みが和らぐことがあります。発症様式増悪/寛解因子Ⅰ. 消化器疾患と腹痛
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