知っておきたい“腹痛(おなかが痛い)”のポイント
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16179. 卵巣腫瘍破裂、卵巣腫瘍茎捻転(けいねんてん) 卵巣は比較的腫瘍ができやすい臓器と言われていますが、そのほとんどが良性です。しかし、良性であっても注意すべき病態が2つあります。一つは卵巣腫瘍破裂で、もう一つは後述する卵巣腫瘍茎捻転です。 卵巣腫瘍破裂による腹痛は突発性の片側の下腹部痛が典型的で、運動や性交時に発症することが多いようです。症状が強かったり持続する場合は手術が必要になることもあります。卵巣腫瘍茎捻転は、卵巣を支えている2本のじん帯がねじれることによって起こります。症状としては、急激に起こる下腹部の激痛として現れることが多いようですが、ねじれが急激に起こらず次第にねじれてくる場合には徐々に痛みが増す形となります。通常は開腹手術による治療が必要となり、捻転を起こした側の卵巣・卵管を摘出する必要があります。10. 卵巣出血 卵巣出血は、排卵期に卵胞が裂けて出血します。片側の下腹部痛で痛みの程度は軽いことが多いです。少量の出血であれば自然に良くなりますが、症状が強い場合や出血量が多い場合は手術により止血と血液除去を行ないます。11. 骨盤内腹膜炎 骨盤内腹膜炎は子宮、卵管やその周囲の組織が炎症を起こしている状態で、クラミジアや淋菌など性行為で感染する菌が原因となることが多いため性行為感染症の一種と言われています。不特定多数の人と性交渉歴のある方に数日かけて徐々に進行する下腹部痛や発熱、オリモノ(膿性膣分泌物)の増加を認めるとき、骨盤内腹膜炎が疑われます。骨盤内腹膜炎の治療は、抗生剤の点滴や内服で治療します。繰り返すごとに不妊率があがり、3回繰り返すと不妊率が100%近くになりますので、予防(不特定多数の人と性交渉を行なわない、性交渉時にはコンドームを確実に使用することなど)が大切です。また、せっかく治癒しても保菌者である性交渉のパートナーから再感染する可能性も十分ありますので(ピンポン感染)、パートナーの治療も必須となります。12. 子宮内膜症 子宮内膜症は、本来は子宮の内側にしか存在しないはずの子宮内膜が、子宮以外の場所(卵巣、腹膜など)で増殖、剥離(はくり)を繰り返す病気です。子宮の内側からはがれ落ちた子宮内膜は、月経血として膣から体の外に流れ出ていきますが、子宮以外の場所で増殖した子宮内膜はお腹の中にとどまり、炎症や痛み、癒着の原因になります。症状は、月経が繰り返されるたびにだんだんひどくなる月経痛です。鎮痛剤を使う回数が増えてきた、鎮痛剤が効かない、毎月のように痛みのため寝込むという人は、我慢しないで早めに産婦人科に受診しましょう。13. 子宮筋腫 子宮にできる良性の腫瘍のことを子宮筋腫といいます。ほとんどは無症状なのですが、症状がある場合は月経期間が長くなったり、月経時の出血量が多くなったり、強い月経痛が起きたりします。思い当たる症状がある場合は産婦人科を受診してください。

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