家庭で知っておきたい耳鼻咽喉科の救急
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23第1章 (図2) (図1)  耳鼻咽喉科疾患では耳・鼻・のど(咽頭・喉頭)についてそれぞれ特徴的な症状がみられます。このうち、救急受診を必要とするような状態を含む可能性のある症状には以下のようなものがあります。すなわち、「がまんできない痛み」・「止血できない顔面(耳・鼻・のどから)の出血」・「呼吸障害」・「摂食障害」によるものです。その他、一般の方には耳鼻咽喉科が取り扱うことがあまり知られていないものとして、めまいと顔面神経の麻痺があります。  この章では主な症状を中心として、その他の状況から考えられる疾患について述べます。  耳の役割には音を聞くことと、体の平衡を保つことの2つがあります。耳は外耳(耳介と外耳道)、中耳(鼓膜、耳小骨、耳管で形成される中耳腔)、内耳(音を感じる蝸牛と体のバランスをとる前庭・三半規管)から構成さ例 れます。(図1)耳の痛みを生じる疾患には以下のようなものがありますが、内耳には痛みを生じる病気は少なく、主には外耳や中耳の病気で起こります。また、直接耳に病気があるのではなく周囲の炎症などから耳の痛みとして感じることもあります。 盧盪蘯〜・・・・・ ①②③〜・・・・・  →  ・・・・・ 主な症状 その他の状況など 考えられる疾患 盧 耳の痛み(耳痛)  ①耳の外の方に痛みを感じるとき。耳介が腫れているとき。  →耳介、外耳道の炎症(耳介炎、外耳炎など)耳を掻いたり、清潔を保てなかったピアスの穴からの感染などによります。(図2)  ②耳の奥に痛みがあるとき。最近鼻汁など感冒症状があったとき。  →鼓膜、中耳の炎症(鼓膜炎、急性化膿性中耳炎など)(図3)  ③耳の周囲の病気から耳痛として感じるとき。  →耳の周囲からの放散痛など(顎関節症、扁桃炎など)診察で耳を観察しても耳自体には異常のない状態です。  ほとんどが解熱鎮痛剤(いわゆる熱さまし、痛み止めの薬)による鎮痛で対応可能です。中耳炎のなかには中耳腔に滲出液や膿汁が貯留することで痛みを生じているものもあります。  鎮痛剤の持ち合わせがなく、痛みのために食事や睡眠がとれない状態のときは救急受診してください。 耳の解剖外耳炎の炎症の場所と所見中耳炎の炎症の場所と所見耳介耳小骨外耳道鼓膜外耳中耳内耳前庭・三半規管蝸牛耳管中耳腔外耳道の皮膚の発赤、腫脹鼓膜の所見は正常鼓膜の充血による発赤(図3) 中耳腔内の炎症、膿汁貯留症状からみた耳鼻咽喉科の疾患とその対応、救急診療の目安A:耳の症状耳痛への対応 救急受診をする目安

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