盪 虫による外耳道異物 耳に異物が入り込む異物症のほとんどは痛みの程度が強くないため、そ22てあげることができます。急に生じた耳痛の原因としては、大人の場合は急性中耳炎の他に急性外耳炎による痛みのこともあります。もともと耳をよくつつく(耳掃除をこまめにやりすぎる)タイプの人が外耳道の皮膚を傷つけて感染を生じることで発症するものですので、痛みをきたすようになる前に耳掃除を行った心当たりがあることがほとんどのようです。この場合もたちまちの痛みを緩和する目的で使用可能な痛み止め(解熱鎮痛剤)を使用されて、翌日に耳鼻咽喉科への受診を行われることで夜間の対処が可能になります。 同様に感冒時の鼻炎による鼻の痛みや、咽頭痛に対しても痛み止めの使用で痛みの緩和をはかることは可能ですが、咽頭痛につきましては、呼吸や飲み込みに対しての症状が強いもの(特に痛み止めを飲んでも食事が食べにくい程度のものなど)は、救急受診を考慮する必要があります。 のままにして翌日の耳鼻科受診で問題ないことがほとんどなのですが、特殊な状況の外耳道異物に虫などの迷入によるものがあります。虫が外耳道の奥を動くことで鼓膜などに接触して強い痛みを生じます。痛みの程度が強く、虫が動く間痛みが続くため救急受診を必要とする耳痛の1つになります。 まず、虫が自分から出ていってもらえるようにするのですが、虫の入り込んだ側の耳を塞がずに上にしてみます。 この方法のみで出てきてくれないときは、次に懐中電灯などの明かりで耳の中を照らしてみるのですが、虫の種類によっては明かりで照らすと自分から出てくるものと逆に暗がりに逃げ込んで出てこなくなるものがあります。出てきてくれないときは耳の中に何かの液体を入れて、流し出すことを考えます。 家庭内で一番はじめに思いつくのは、「水(水道水)」だと思います。ただし、「水」を使用した場合では、虫の体毛により水をはじき、体に空気の泡をつけたりするとなかなか死んだり弱体化せず、上手く出てこないことも多いようです。また、水はその温度が体温(約37度)とあまりにかけ離れていると、内耳の温度刺激により、回転性のめまいを生じてしまうことがあります。(温度刺激による正常な内耳の反応です。) 経験的に家庭にあるものでもっとも安全に使用できると考えられるものは、食用の油類です。使用する油はサラダ油でもオリーブ油でもかまいません。油はいくつかの点で生物異物に対して有効と考えられます。1つは使用した人体には無害であること。(油はマッサージなどで体に塗っても安全ですので)生物により外耳道の皮膚や鼓膜が損傷していた場合でも、炎症をひきおこしたりするような副作用はほとんど起こらないと考えられます。もう1つは油が異物を包み込むため特に昆虫異物については虫を窒息させてしまうことです。また、油により、虫のかぎ爪なども皮膚からすべり、油に浮いて出てきてしまうこともあります。 よくみられる生物異物としてはゴキブリ、蛾、コガネムシ、ムカデなどがあります。(図16) 医療機関では生物を殺したり、動きを弱らせるため、麻酔剤のスプレーなどで生物を弱らせてから摘出します。 (図16) 虫による外耳道異物の例(コガネムシ)コガネムシの腹部23外耳道の皮膚摘出したコガネムシ
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