家庭で知っておきたい耳鼻咽喉科の救急
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第2章 盧 外耳炎、中耳炎による耳の痛み 夜間に突然生じる耳の痛みは、大人であってもがまんすることは難しく、2021 発見したときにのどにつかえている場合、喉頭や気管に詰まっている場合は声を出すことができませんので、のどを押さえるしぐさ(チョークサインと呼びます。)をします。また、苦しそうな咳を繰り返して行います。  窒息により顔色が赤黒くなっている場合は、まず大声で助けを呼び、周囲の人を呼び集めます。その上で、のどの奥に異物があるか、口腔から指を曲げて入れて掻きだせるものがあるか試みます。このとき指を噛まれないように注意が必要です。  小さなお子さんの場合は逆さにして、背部を叩く方法(叩打法)や、ある程度大きな子どもさんや大人の場合は、肺に残っている空気を一気に押し出して異物を喀出させる方法(ハイムリック法)などもありますが、これらの方法を行うには救命救急の対応の研修を行われていなければ難しいでしょう。(詳細につきましては 広島県医師会のホームページから救急小冊子の「救命(いのち)のリレー」の異物除去などをご参照ください。)  痛みのない外耳道異物のみ翌日以後の診療で対応可能です。その他の部位については、呼吸障害や嚥下障害をきたしますので早期に相談受診することが必要です。  特別な異物の例としては、おもちゃなどに使用されるボタン型の電池を飲み込んでしまう、「ボタン電池による食道異物症」があります。前述したように異物症は一般的に早期の診療で確認し、摘出してしまうことが望ましいのですが、その中でも「ボタン電池による食道異物」は長時間同じ部位に接触して電流がながれていると、接触している粘膜の腐食が進み食道の粘膜に穴があく(食道穿孔)の危険性が大きくなります。食道穿孔を生じると周囲に炎症がひろがり重症になります。  以下に示す症状や病態については、家庭での対応により夜間の緊急受診を避けられることがあります。ただし、対応についてや病状について少しでも心配があるようでしたら、まず電話などでの問い合わせを行ってみてください。 ましてや乳幼児では泣くこと以外にできないため、親も困ってしまうことがあります。ただ、もともと元気であった子ども(乳幼児)が、急に生じる耳痛については、ほとんどの場合が急性中耳炎によるものです。急性中耳炎(いわゆる中耳炎)の病状によっては、中耳に貯まった膿汁を鼓膜切開(手術)により排膿することで鼓膜にかかる圧力を減じて、痛みの軽減をはかれることもあります。また、排膿して細菌の量を減らすことは薬剤の効果を高め、その後の治療によいこともわかっています。ただ、中耳炎の病期(病状の時期)により、炎症の初期で膿汁があまり中耳に貯留していない時期ではこの方法では効果が少ないこともあります。また、排膿処置では炎症自体をすぐになくしてしまうことはできないため、手術的な処置を行うことが難しい夜間の救急では、たちまちの痛みを軽減するためには、いわゆる痛み止め(解熱鎮痛剤とよばれる薬剤)を使用することで対応します。解熱鎮痛剤は炎症を緩和して発熱を抑え、痛みをとる作用の薬剤ですが、発熱のない痛みだけの場合にも使用は可能です。このため、子どもさんが夜間に急な耳痛を訴えられるようなときは当座の対応としてお手持ちに解熱鎮痛剤(子どもさんの使用の可能なもの)があれば、それを使用することで苦痛をとっ救急受診の目安 家庭でできる応急対応

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