家庭でできる感染対策-食中毒Q&A-
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 これは、一つには病原微生物に汚染された食物・水の問題があります。古くなった食べ物・水は口にしないというのが原則ですし、また手に傷がある場合などは調理する際手袋をするなど気をつける必要があります。  もう一つの問題として、病原微生物に汚染された、あるいは汚染された可能性のある器具(器具というとおおげさですが、日常用品のことです)をどう消毒するかをお話ししたいと思います。  これは医学の専門用語になってしまいますが、「滅菌」と「消毒」には差があります。滅菌とは、「すべての微生物を殺滅させるか、完全に除去すること」を言います。消毒とは「人体に有害な微生物の感染性をなくすか、数を少なくすること」を言います。人間には「皮膚」という微生物に対するすばらしいバリアがあるために、日常生活において「滅菌」したものを用いる場面は、まずありません。さらに言えば、「消毒」を必要とする場面も、そう多くはないと思います。日常用品の多くは、「洗浄と乾燥」を十分に行うだけでよいと思います。表に、医療機関においてですが、感染リスクとそれに応じた対策の基本的な考え方を示しますので、参考にしていただければと思います。  消毒の具体的なお話をする前に、普通のものは洗浄と乾燥で十分ですし、また消毒をするにしても、その前に十分な洗浄をしていただくことが重要であることをお話しさせて下さい。例えば、あとに述べます加熱による消毒を行おうと思っても、いきなり洗いもせずに熱をかけてしまうと、汚れが固まって(たんぱくの凝固など)カラカラになってしまいますよね。これではきれいになったとは思えません。また、消毒薬を用いるにしても、汚れがあると、その汚れがバリアになって消毒薬が病原微生物に達することができません。これではいかに強力な消毒薬を使っても意味のないことになります。ですから、ちょっと気持ちが悪い感じがするかもしれませんが、まずはよく洗うことが重要であることを知っておいてください。もしどうしても気持ちが悪いなぁと思われる場合は、手袋とビニールエプロンを準備して洗いましょう。少し深めの洗い桶を準備して、洗い桶に水を溜めて、蛇口から水を流した状態にしておきましょう。必要であればブラシを利用して溜めた水の中でものを洗いましょう。直に蛇口からの水では洗わないようにしましょう。水はねして目や口に飛び散るのは嫌ですものね。  註:ここでは、一般の物品の消毒についてのみを述べます。傷などの消毒については別の機会で…。 1011感染リスク 高リスク 皮膚または粘膜を通過して直接体内に接触または入るもの 粘膜に接するもの。血液や病原微生物に汚染されたもの 中間リスク 低リスク 傷のない正常な皮膚に接するもの 考 え 方 対策レベル 滅 菌 消 毒 洗浄および乾燥 トイレ、洗面所、 衣類・シーツなど 例 手術器具、 注射針など 消化管内視鏡 など 一般媒介物による感染経路 滅菌と消毒 洗浄と乾燥の重要性

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