禁煙コーナー

禁煙に関するコラム

なぜ喫煙率が下がらないのか

広島県医師会 常任理事
三宅 規之

 各国で禁煙対策が行われており、以前に比べると喫煙率は下がってきている。2018年のWHOの統計で、日本人の喫煙率は男性が37%で世界の70位、女性が11.2%で55位となっているが、男性はG7(先進7ヵ国)の中ではフランスに次いで高い。ちなみに最低がカナダ16.6%、アメリカ24.6%となっている。
 タバコは日清日露戦争の前後から、戦費のための税収を目的とした国策に利用され、明治政府はタバコを専売制にした。その頃から、世界各国でもタバコは出征兵士への慰問品であり、戦地でタバコを覚えた兵士が国に帰ってから周りに広めるなどして、どの国でも当然のように喫煙率は上がっていった。もちろん、その時代にタバコの害を唱える人はほとんどいなかったし、政府や国が自らタバコを広めていったという歴史的背景がある。
 タバコによる害があることは科学的、医学的に研究されてきたが、ここ数十年になって、やっとタバコに害があることが周知されてきて、COPDや動脈硬化による疾患の他、肺癌をはじめとする多くの癌の原因になる他、受動喫煙の被害も含め、健康寿命の短縮、医療費の増加など、健康面だけでなく社会的にも問題となることが問われるようになった。
 そこで、多くの国が禁煙対策に取り組むようになったわけだが、その後は、各国の事情もあって、取り組みに差が出てきており、2016年において、飲食店などを含め屋内全面禁煙を法律で決めているのは55ヵ国にすぎない。
 日本においてはどうかというと、2000年からの第1次健康日本21におけるタバコ対策、2003年の健康増進法の施行(受動喫煙防止対策)、2006年の禁煙治療に対する健康保険の適応などの対策が行われているが、主にはタバコの値上げによって喫煙率を減少させる方法が取られている面が大きい。これは、税収とも関係しており、経済と両てんびんにかけた対策と言われても、仕方ないと考える。
 その他、日本においては、国が過去にタバコを推奨してきた結果、国民の間でタバコに関する寛容さが見受けられることがあると思われる。禁煙を働きかけても、分煙でいいのでは、と言われる要因として、経済的な意味合いと、この寛容さが大きな理由と考えられる。そのため、医療機関や公共施設などで敷地内全面禁煙となっている場所も増えてきているが、行政の建物を含め、喫煙室を設けるなど、分煙対策になっている場所も多い。また、アメリカで1920年代に施行された禁酒法によって、闇アルコールが横行し、反社会的勢力の資金源となったことを受け、日本がタバコを禁止したら、他国からの海賊版闇タバコが広がり、治安の面で社会的に悪影響を与える可能性がある、と言われる方もいるようである。
 そのような状況の中で、これからの禁煙対策を考えてみるわけであるが、一つは、麻薬のように全面的に禁止、喫煙は犯罪とする方法であろう。私個人的には、それぐらいしないと本当の禁煙対策にはならないと思っている。しかしながら、経済的影響、タバコに関する社会的寛容などを考えると、さすがにやりすぎと言われても仕方がない意見であるし、他の国でも、そこまでしている国はない。次に考えるのは、法律的に今以上に喫煙できる場所を制限することであろうか。いわゆる全公共施設、市街地における全面禁煙である。少なくとも人前での喫煙をなくし、受動喫煙を防止する効果はあると考えている。
 最後に、私の個人的な考えを書かせていただいたが、これくらいきびしい対策を取らなければ、日本の禁煙対策は進まないとさえ思っている。

戻る