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皮膚病-時に救急疾患を中心にして-

目次

8.動物による皮膚疾患

蚊、蜂などの昆虫その他動物による皮膚疾患は非常にたくさんの種類があります。その多くのものは、前兆もなしに突然起こってくるため、しばしば、救急処置の対象となります。またそうでなくても、治療が早期に行われることが望ましいものも多くあります。
そのうち、軽症の多くのものは、ステロイド軟膏の外用、痒みが強ければ、痒み止め(抗ヒスタミン剤など)の内服程度で十分です。しかし、中には、上記の 治療では、不十分なもの、あるいは、逆に悪化するものもあります。こういった治療に注意、工夫を要するものについて述べてみます。

(1)疥癬(かいせん)
疥癬虫(ヒゼンダニ)のヒトの皮膚の角層内に寄生することにより発生します。周期をもって流 行を繰り返しています。昭和50年以降は、流行の衰えが見えず、最近では、皮膚料の一般外来で頻繁に見る病気の一つになっています。非常に痒い皮膚病で、 身近に接する者に感染してゆき、早くこの病気に気付かないと、多数の人が苦しむことになります。
感染後1か月前後して発症します。非常に強い痒みをおぼえ、夜睡眠が妨げられることもしばしばあります。皮疹は、丘疹、小結節、疥癬トンネルよりなりま す。小型の丘疹(ブツブツ)は、腹部、へそのまわり、下腹部、大腿内側、脇の下、上腕、前腕屈側に好発します。くびより上には、普通皮疹はありませんが、 乳幼児ではみることがあります。小結節(やや大型のブツブツ)は、陰嚢、陰茎に好発します。脇の下、鼠径部、腎部にもできます。疥癬トンネルは、手の指、 肘、外陰部、下腹部、膝などにでき、成熟したメスの疥癬虫が卵を産みながら角層内にあなをあけたもので、これが確認できれば診断的価値があります。最初は しばしば湿疹などと間違えられて治療をされる場合があります。湿疹や、他の多くの虫刺されには有効なステロイド軟膏はこの疥癬には効果がなく、むしろ症状 をひどくします。
感染経路は、直接接触による場合と、ふとん、こたつなどに間接接触によるものとがあります。実際には、性交、親子の接触、寮、病院(入院患者、病棟看護婦など)などで感染します。
湿疹の治療で軽快しない、皮疹が陰部、指の間、手首などに多い、家族、同僚などに同じ症状のものがいるなどのことに気付き、皮膚材料からの検査で疥癬虫が証明されれば、診断はつきます。
治療は、安息香酸ベンジル、オイラックス、その他外用療法が主体です。適切な治療を行えば治りやすいのですが、家族、寮、病院など感染が疑われる集団の 構成員の全員に同時に治療を行わないと、一度治っても治療し残した患者から何度でも再感染を起こし、手こずる場合があります。他の人に感染しないように早 めに皮膚科を受診し、正確な診断と治療の指導を受ける必要があります。

(2)ツツガムシ病
ツツガムシの幼虫によって媒介されるリケッチアという病原体による感染症です。
戦前はアカツツガムシに媒介される古典的ツツガムシ病で東北地方に比較的限局していました。戦後は、フトゲツツガムシ、タテツツガムシなどによる新型ツツガムシ病が全国で発生しています。
野山、畑での作業中、散策中、ゴルフ場などで罹患します。
有毒の虫に刺されると、その部に発赤を生じ、水疱を作りのちに皮膚が壊死を起こし、かさぶたがはり、診断的価値の高い焼痂(しょうか)(刺し口)となり ます。1週間後にリンパ節が腫れ、高熱、頭痛、倦怠感が起こってきます。同じ頃より体、四肢に自覚症のない紅斑(バラ疹)が多発します。
一般的によく使われるセフェム系、ペニシリン系などの抗生物質は無効で、テトラサイクリン系、リファンピシン、クロラムフェニコールなどが有効です。早 めに診断がつけば予後は多くの場合良好ですが、なかには、肝臓、腎臓、肺その他、多臓器不全を起こし死亡する例もあります。

(3)クラゲ螫症
海水浴シーズンに好発します。初めに激痛があり、点状~線状に紅斑、蕁麻疹様皮疹を生じ、時 に皮下出血、壊死、発熱、寒気、ショックをきたすことがあります。水でよく洗い流し、アルコールなどで刺糸を除去、抗ヒスタミン剤を内服、ステロイド軟膏 を塗るなどの治療で経過は良好です。

(4)海水浴皮膚炎
海水浴皮膚炎は広い意味では、下のものをすべて含みますが、
(1)海水中の物質による接触皮膚炎
(2)衣類による接触皮膚炎
(3)香粧品による接触皮膚炎
(4)日光による皮膚炎
一般的には、プランクトン皮膚炎をさします。7月下旬~9月上旬に好発。水着に覆われた部分(腎部、乳房部、下腹部)が主体で、海水浴中または水からあ がってから水着に覆われた部分にチクチクした痒みと軽い痛みを感じます。小さいブツブツと軽い赤み、はれを伴います。水着を脱いであるいは水着と皮膚とを 十分離して局部を水洗いし、時間がたったものではステロイド軟膏、抗ヒスタミン剤内服などが必要となります。

(5)ノミ刺症
ヒトノミ、ネコノミ、イヌノミなどがありますが、ネコノミによるものが増えています。
ネコノミによるものでは、膝から下の下腿が好発部位ですが、その他、上肢、ひどい場合は、腹部、胸部などにも皮疹が現れます。非常に強い痒みをもった発 赤、丘疹、硬結がみられ、大型の水疱ができることもあります。全身症状を示す場合もありますが、徐々に免疫ができてきて、刺されても平気になる人もいま す。家の中で猫を飼っているひとがネコノミに刺されるのは当然ですが、猫を家で飼っていなくても、夏などには土の中にいるノミに庭で刺されたりという被害 者もあります。
ステロイド軟膏、抗ヒスタミン剤の内服、重症の場合はステロイドの内服を行います。その他にネコノミの駆除対策が大切なことはいうまでもありません。

(6)ドクガ皮膚炎
ドクガ、チャドクガ、モンシロドクガの3種が代表的です。幼虫は昼間直接ひとの皮膚を刺し、 成虫は尾部に幼虫時代からの毒針毛を持っており、夜間灯火の下でこれをまきちらすことにより人の皮膚に皮膚炎を起こします。成虫の場合、露出部だけでなく 衣服に覆われた部分にも皮疹が見られます。
幼虫の場合、皮疹は限局性ですが、成虫の場合は皮疹は多くの場合、広範囲に分布します。痒み、痛みを持った紅斑、水疱、丘疹などがみられ、治療は他の虫刺されに準じます。

(7)甲虫による皮膚炎
1)カミキリモドキによる水疱性皮膚炎、2)アオバアリガタハネカクシによる線状皮膚炎が有名です。それぞれ、虫の液体が皮膚に付着して皮膚に水疱をつくります。特に2)の場合は目に入った場合は、眼病変を起こすことがあり重症の場合には失明することもあり要注意です。

(8)蜂
激痛、腫れ、紅斑、時に吐き気、呼吸困難、蕁麻疹、などを起こし、時にショック死することも あります。刺されないように予防的注意が大切です。刺された場合には、まず、できれば針を取り除き、湿布、ステロイド軟膏の塗布、抗ヒスタミン剤の内服、 重症の場合は、ステロイドの内服、医療機関でセファランチンの注射などを行うようにします。

(9)ムカデ
ムカデは夜間活動性で、夜間、屋内での被害例が多いようです。局所の腫れ、紅斑、水疱などを生じ、まれに全身症状を生じることもあります。一般の虫刺されの治療を行いますが、重症の場合は入院、全身管理が必要です。

(10)蚊刺過敏症
まれに、蚊に刺されて、局所の反応だけでなく、発熱などの全身症状をきたし、局所も壊死、潰瘍になるような激しい反応を示す人がいます。死亡例もありますから、蚊に刺されたために発熱をみるような場合は、迷わず医者にかかって下さい。





「皮膚病」(特に救急疾患を中心にして)(非売品)

発 行 日 平成4年9月9日

執 筆 者 社会保険広島市民病院 皮膚科副部長 赤木  理

発 行 人 広島県医師会長 福原 照明


〒733-8540 広島市西区観音本町1丁目1-1


広島医師会館内 TEL(082)232-7211

印  刷 (株)アド・プレステージ TEL(082)240-5222

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