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皮膚病-時に救急疾患を中心にして-

目次

6.細菌性皮膚疾患

皮膚に、病原性をもつ細菌の中で代表的なものは、黄色ブドウ球菌、連鎖球菌などです。
処置が早い方がよいものの代表的な細菌性皮膚疾患には下のようなものがあります。
(1)ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)
(2)伝染性膿痂疹(トビヒ)
(3)せつ、せつ腫症、癰
(4)毒素性・ショック症候群(TSS)
(5)猩紅熱
(6)丹毒

(1)ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群(SSSS)

咽頭、鼻腔などで増殖した黄色ブドウ球菌により作られたETという毒素が血流を介して、全身の皮膚に到達して、広範な表皮の剥脱を起こします。皮膚が原発巣になることもあります(とびひなど)。
発熱とともに、口、眼のまわり、鼻の入口の発赤にはじまり、1~2日のうちにびらん、かさぶたになり、この病気特有の顔付きになります。目やにが多くな り、口の回りには放射状にひびが入ります。3日以降になると全身の皮膚がめくれあがったようになり、水疱もみられます。発赤は、くび、わきのした、肘、そ けい部、などしわの部分で特にひどく、5~6日頃より徐々に、色はうすれてゆき、3~4週間で治癒します。あとに、あとかたを残さず治ります。
口の回りのひびわれの軟膏処置を怠っているとあとが残ることもあります。
入院、十分な全身管理、抗生物質の全身投与が必要です。
新生児から乳幼児によく起こりますが、まれには、免疫力の低下した老人にも発生します。新生児や、免疫力のおちた老人の場合は死亡することもあるので要 注意です。比較的まれな病気ですので、経験のある専門医でなければ診断が難しい場合もあります。


(2)伝染性膿痂疹(とびひ)

伝染性膿痂疹は夏、子供によくみられ、水疱、びらんを主症状とする疾患です。
黄色ブドウ球菌、化膿性連鎖球菌によります。生命に対する予後はまず問題になりませんが、ブドウ球菌によるものでは、SSSS を引き起こすことがあり、化膿性連鎖球菌のあるタイプによるものでは腎炎を合併することがあり、原因菌の確定をできるだけ行って全身的に抗生物質の投与を 早めに始める方がよろしい。病変が身体の一部に限られる場合は、抗生物質軟膏で密封し処置することは意味がありますが、病変が多発している場合、局所療法 だけでは治癒は望めず、抗生物質の全身投与(内服)が必要です。
あまりに早めに治療を中止すると、再発することがあります。
予防:
(1) 普投から皮膚を清潔に保っておく、(2) 入浴、シャワー、
(3) きたか-爪で虫刺され、アトピー性皮膚炎などの病変を引っ掻かない、(4) 鼻の穴に化膿性の病変がある場合はその処置をしておくことなど


(3)せつ、せつ腫病、癰(よう)

いわゆる「おでき」で、主として、黄色ブドウ球菌が原因菌となります。毛穴に一致した病変 で、最初、小さな丘疹(ぶつ)として始まり、次第に大きく、固くなり、押さえると痛むようになり、だんだん中にウミをもつようになります。発熱をともなう こともあります。病変の近くのリンパ節が腫れたり、血液中に菌が入り込み、敗血症を生じることもあります。自然にうみが出てしまい治ることもありますが、 治療を必要とすることが多く抗菌剤の全身投与が必要ですが、とびひなどに比べると皮膚のより深い部分にまで入り込んでいるこの病気の病原菌は、ブドウ球菌 の中でもいろいろな薬に耐性のものが多く、治療にてこずることがしばしばあります。ウミがたまってきた段階で切開処置をすることは、症状が速やかに改善 し、治癒に役立ちますが、あまりに早期に行った場合は逆に病変の拡大を招くこともあり、注意が必要です。
せつが多数、体のあちこちに発生し、出没を繰り返す場合、これを、せつ腫症といいます。
せつと同様に毛穴に一致した丘疹として始まるが、隣り合う複数の毛穴が侵され、なおかつより深い病変を形成するものが癰(よう)です。糖尿病、副腎皮質 ホルモン剤長期投与中など、何らかの免疫低下状態の思考に生じることがあり、この場合、より重症になります。原疾患がある場合には、その治療とともに、積 極的な、十分な抗菌剤の投与(注射、内服)が必要です。


(4)毒素性・ショック症候群(TSS)

まれな病気ですが、黄色ブドウ球菌が原因菌で、若い女性に好発。急激な高熱、筋肉痛、低血 圧、嘔吐、下痢、皮膚には日に焼けたような紅斑が出現するなど多くの臓器に障害が起こります。主に生理中に起こり、高吸湿性タンポン使用者に多発します。 死亡率は数%と高く、積極的な治療が必要です。抗菌剤の全身投与と、タンポンの除去、膣洗浄などを積極的に行うことが大切です。その後、皮膚軟部組織感染 症、産婦人科領域の手術創感染によるものが多くなっているようです。


(5)猩紅熱

A群β溶血性連鎖球菌の感染があり、この菌が出す毒素により、皮疹を生じます。扁桃炎などにひき続いて起こるのが普通です。
発熱、嘔吐、頭痛、のどの痛み、寒気で急激に、発症。扁桃、咽頭が赤くはれ、舌も荒れてぶつぶつが目立ち、白い苔のようなものがその上をおおいます。 1~2日うちに皮疹が生じます。顔はび慢性に赤くなりますが、口の回りは蒼白くなります。体では、脇の下、くび、そけい部より紅斑が生じ、急激に全体に拡 大します。触るとザラザラと触れるのが特徴です。
正しい診断のもとに、安静保持、輸液などとともに、ペニシリンなどの抗生物質の投与が行われれば速やかに治癒に向かいます。
肝障害、腎炎などを起こすこともありますので注意が必要です。


(6)丹毒

A群連鎖球菌によることが多く、乳児、中年以降によく発生します。
顔、頭、耳、外傷を受けやすい四肢などに好発し、病原菌が皮膚の小さな傷から、皮膚の内部の真皮という層まで入り込み、発症します。突然、発熱、寒気が 現われ、多くの場合、全身状態がおかされます。境目のはっきりした紅斑出現後、短時間でどんどん拡大するのが特徴です。水疱、膿疱をみることもしばしばあ り、紅斑は触るとぴりぴりと痛みます。
リンパ管炎、腎炎などを合併することがあります。敗血症の原因となります。
入院治療が好ましく、抗生物質(特にペニシリン)が有効です。適切に治療されれば、臨床症状は短期間で劇的に改善しますが、治療を早めに中止しますと再 発の原因になることがありますので、症状が改善してもなお一定期間の治療が必要です。他に合併症がないかぎり適切に十分な治療が行われれば、経過はよろし い。


(7)壊死性筋膜炎

四肢、特に下肢によく起こります。激痛をともない、皮膚に部分的に腫れと赤みが現れ、水疱、 潰瘍を生じることもあり、急激に拡大し、発熱、ショックなどの重大な全身症状を伴うことがあります。様々な菌の混合感染のことが多く、皮下組織、筋膜組織 が広範囲に壊死におちいっており、外観に比して、実際の病変は重篤です。早急に切開、広範囲の壊死組織切除を行わないと予後の悪いことが多く、死亡率は約 30%といわれています。

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