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知っておきたい産婦人科の救急

目次

産科の救急

性器出血・下腹部痛

妊娠中に性器出血・下腹部痛を認める場合は救急疾患の可能性があります。

下記の場合に見られます。

[妊娠初期]切迫流産異所性妊娠

[妊娠中期・後期]切迫早産常位胎盤早期剥離前置胎盤

① 切迫流産

妊娠22週(赤ちゃんがお母さんのお腹の外では生きていけない週数)より前に妊娠が終わることを「流産」といいます。しかし、胎児が子宮内に残っており、流産の一歩手前である状態を「切迫流産」といい、妊娠継続の可能性があります。

妊娠12週までの切迫流産に有効な薬剤はないと考えられており、経過観察で対処することとなります。子宮の中に血腫(血液のかたまり)がある場合には、安静が効果的とする研究報告もあります。

少量の性器出血や軽度の下腹部痛は、正常妊娠でも起こることがありますし、切迫流産の場合でも対処法はなく安静・経過観察となりますので、すぐに救急外来を受診する必要はありません。しかし、安静にて症状が改善せず増悪する場合には、異所性妊娠の可能性もありますので、受診してください。

② 異所性妊娠

赤ちゃんが正常に発育できる子宮内腔以外の場所(卵管や卵巣など)に妊卵が着床したもので、全妊娠の1−2%にみられます。異所性妊娠の98%が卵管妊娠で、そのほとんどが卵管膨大部妊娠です。その場合、卵管流産または卵管破裂を起こして、お腹の中に出血します。性器出血があるまでほとんど症状はありませんが、性器出血とともに強い下腹部痛を認め、貧血・出血性ショックを引き起こします。その他に頻度は少ないですが、 図1に示すような部位に、異所性妊娠が起こる可能性があり、部位により症状が少し変わります。

市販薬で妊娠反応陽性となった妊娠5−6週以降で、超音波検査にて子宮内腔に胎嚢を認めない場合は、異所性妊娠の危険性があるため慎重な管理が必要となります。

治療は、原則的には手術療法(腹腔鏡手術・開腹手術)ですが、全身状態や着床部位などによっては、薬物療法(MTXによる)や経過観察を行うこともあります。

図1

図1

③ 切迫早産

妊娠22週以降で妊娠37週より前の出産を「早産」といい、早産の一歩手前である状態を「切迫早産」といいます。子宮収縮が頻回に起こり、子宮の出口が開いてしまって赤ちゃんが出てきそうな状態や、赤ちゃんを包む膜が破れて羊水が漏れている状態(破水)のことです。

治療としては、子宮口が開かないように子宮収縮抑制剤を投与します。また切迫早産の原因となる腟内の細菌感染を除去するため抗生剤投与することもあります。また、子宮収縮が軽くて子宮口があまり開いていない場合には外来通院による治療が可能ですが、症状が増悪した場合には入院管理にて治療を行います。

妊娠32週より前に破水した場合には、赤ちゃんが自分で呼吸ができる状態になるまで抗生剤を投与して細菌感染を抑えます。妊娠34週以降であれば、赤ちゃんは自分で呼吸できる可能性が高いので、感染する前に出産し、生まれた後に治療室で赤ちゃんの治療を行います。

なお、子宮口が開きやすい体質(頸管無力症)の場合には、状況により子宮の出口を縛る手術(子宮頸管縫縮術)を行うことがあります。

④ 常位胎盤早期剥離

赤ちゃんがまだ子宮内にいるうちに、胎盤が子宮から剥がれてしまう状態です。お母さん・赤ちゃんともに生命が危険な状態に陥るため、緊急性の高い病態です。

原因としては、妊娠高血圧症候群、子宮内感染、外傷(交通事故)などが挙げられます。

はっきりとした症状がないことも多いのですが、性器出血・強い下腹部痛・胎動減少を認めた場合には救急外来を受診していただき、超音波検査・胎児心拍陣痛図・血液検査等にて詳しく調べる必要があります。

治療としては、常位胎盤早期剥離と診断された場合には早期に赤ちゃんを娩出する必要があるため、緊急帝王切開術を行います。なお、大量出血による播種性血管内凝固症候群(DIC)に陥った場合には、さらに出血が止まらなくなるため、速やかにDICに対する薬物療法・輸血を開始します。

⑤ 前置胎盤

前置胎盤は、妊娠中期から後期に出血を起こす代表的な異常で、子宮の出口(内子宮口)の全部または一部を胎盤がおおう状態(図2)を指します。全分娩の0.5%にみられ、帝王切開分娩となります。出血が多量になれば、緊急帝王切開になりますが、妊娠週数や出血の程度によっては、保存的に経過を見てから、帝王切開となることもあります。

図2

図2

破水感

破水した場合、子宮内に細菌などの感染が起こる恐れや、臍帯脱出(へその緒が子宮外に脱出する)などの恐れがあります。妊娠週数が早い場合は特に慎重な管理が必要となります。また、尿漏れと破水はよく似た症状です。どちらかわからない場合もかかりつけ医を受診しましょう。

高血圧・浮腫

高血圧・頭痛・むくみ(浮腫)・急激な体重増加などを認める場合、妊娠高血圧腎症の可能性があります。母児生命を危うくする重篤な合併症が併発しやすく、原則入院管理が必要です。重症化した場合は早期に分娩させる必要があり、慎重な管理が必要です。

胎動減少

胎動(赤ちゃんの動き)が弱まった場合、胎児機能不全(元気でない状態)や胎児発育不全(赤ちゃんが小さい)、子宮内胎児死亡などの可能性があります。受診して、児のwell-beingの評価(赤ちゃんが元気かどうかの評価)を行った方がよい場合もあります。


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