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知っておきたい予防できる海外での感染症

目次

A型肝炎と腸チフス

図1はWHO(世界保健機構)が2012年に発表したA型肝炎の流行地域を示したものです。日本の他、米国、カナダ、ヨーロッパの一部、オーストラリア、ニュージーランドの他は、世界中の殆どの国でA型肝炎に感染する可能性があります。

図1

図1 A型肝炎の流行地域

日本、米国、カナダ、ヨーロッパの一部、オーストラリアなどの一部の国を除いて、世界中で感染のリスクがある

(WHO2012年発表資料より引用)

A型肝炎はウイルスが含まれる飲み物や食べ物を口にすることで感染します。重症化して死亡することは少ないのですが、肝機能が悪化するため倦怠感が出て、場合によっては入院での治療が必要になります。

日本でも衛生状態が良好でなかった時代はA型肝炎の流行地域でした。その頃の日本人はA型肝炎に免疫を持っていましたが、1950年以降に生まれた日本人の殆どは、このウイルスに免疫がありません。免疫がないまま流行地域でウイルスに汚染された水や生野菜、果物、甲殻類を摂取すると感染、発病してしまいます。

腸チフスの流行地域も、A型肝炎とほぼ同じです。世界中の広い地域で感染する危険性があります。腸チフスはウイルスではなく細菌による感染症ですが、A型肝炎と同様に汚染された水や食物を摂取して感染します。おもな症状は下痢と発熱です。また殆どの日本人は腸チフスに対する免疫を持っていません。

A型肝炎と腸チフスは、いずれもワクチンで予防できます。A型肝炎を予防するワクチンには2種類あります。国産ワクチンと輸入ワクチンです。表1に両者の違いを示します。国産ワクチンは、計3回接種すると免疫が獲得できます。効果の持続期間は約5年間です。

表1 A型肝炎ワクチン

  接種回数 効果持続期間 その他
国産ワクチン 3回
(初回、1・6ヶ月後)
3回接種後5年間有効  
輸入ワクチン 2回
(初回、6ヶ月後)
初回接種後2週間で抗体価が上昇し、その後1年有効2回接種で約20年間有効 渡航まで時間がない時に便利

A型肝炎の輸入ワクチンは免疫賦活剤が入っているため短期間で免疫ができます。1回接種すれば2週間後には抗体価が上昇し、約1年間有効ですので、渡航まで時間に余裕がない場合に便利です。半年から1年後にもう一回接種すれば、約20年間効果が持続しますので、何度も海外に出る方に向いています。輸入ワクチンは世界中で広く使用されており、安全性に問題はありません。

腸チフスのワクチンは日本で作られていません。輸入ワクチンのみです。したがって渡航前に接種するには、輸入ワクチンを扱っている医療機関を受診する必要があります。接種可能な医療機関は、厚生労働省検疫所(FORTH)のホームページ(https://www.forth.go.jp/moreinfo/vaccination.html)や、日本渡航医学会のホームページ(http://www.tramedjsth.jp/)で確認できます。腸チフスワクチンも世界中で使用されており、安全性に問題はありません。接種は1回のみで、効果の持続期間は約3年間です。


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