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知っておきたい薬物の乱用・依存に関する基礎知識

目次

IV.薬物乱用予防に関する新しい健康教育の進め方

 薬物の乱用・依存は、主に青少年が罹患する生物的・心理的・社会的疾患とされております。WHOの疾患予防のレベルを、薬物の乱用・依存に適用すると、【第1次予防】は依存性物質に手を出さないための学校における乱用防止教育、地域における啓発活動があげられ、【第2次予防】は症状の重症化を防ぐための早期発見・早期治療、【第3次予防】は治療後の再発予防となります。
 従来の薬物乱用防止教育は、注射器やガイコツなどのポスターで児童・生徒の恐怖心に訴えかける対応が多かったのです。

健康に関連する青少年の6つの危険行動

 青少年の飲酒・薬物乱用は、岐阜薬科大学学長の勝野眞吾先生から提供された図表7に示すように、(1)故意または不慮の事故に関する行動、(2)喫煙、(3)飲酒・薬物乱用、(4)望まない妊娠、HIVを含む性感染症に関係する性行動、(5)不健康な食生活、(6)運動不足という、相互に関連性が強い<六つの危険行動>の一つであり、青少年期に確立され、大人になるにつれて固定化し、進行すると捉えられております。
 従って新しい健康教育は児童・生徒が自らの健康を守るようにライフスキルを高める包括的な対応が必要とされております。ライフスキルは中央教育審議会が用いた「生きる力」に近い概念ですが、友人からの薬物のすすめを拒否できる態度、広告などから勧誘のテクニックを分析する力、コミュニケーションや意志決定能力、ストレス対処などに関する方法の習得、セルフエスティーム(健全な自尊心)を維持する力などが含まれます。ちなみに広島市では、平成22年度から「命の大切さを伝える教育推進プログラム」として、性感染症などと並んで薬物乱用防止を取り上げ、保健体育の教科指導だけでなく、学級担任がホームルーム活動の中で正しい知識の普及・啓発を推進する先駆的な取組みが整備されております。
 図表8では、米国で1975年から2012年までの38年間における大麻(マリファナ)の入手しやすさは、ご覧のように90%前後でほぼ一定です。このような条件下で、1970年代後半のように<薬物乱用の危険性の認識度>が低いと、<現在乱用中(過去1ヶ月間に薬物の乱用経験を有すること)の比率>は1978年のように40%近い値まで上昇しますが、きちんと学校教育の現場や地域における啓発活動の推進によって、<乱用の危険性の認識度>が高まっていくと、現在乱用中の者の比率は199192年のように10%近くまで押さえ込むことができることが分かります。図表7図表8のグラフは岐阜薬科大学学長の勝野眞吾先生から提供されました。

薬物乱用―薬物依存―薬物中毒の関係

 現在のところ、学校現場における薬物乱用問題はかつてのシンナー等有機溶剤の乱用のような大流行は見られないものの、昨今のいわゆる脱法ドラッグ(違法ドラッグ)の乱用や睡眠薬や精神安定剤など医療上処方される向精神薬の乱用問題など、けっして見逃せない問題がくすぶっているので、火事がなくてもいつでも消防署が必要なように、薬物乱用の危険性については、今後とも気を緩めずに、基本的な知識に関して、たゆまず教育し続けることの大切さを教えてくれています。


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