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知っておきたいアナフィラキシーの正しい知識

目次

7 アドレナリン自己注射製剤「エピペン®」を処方されている場合

 ハチ毒、食物及び薬物等に起因するアナフィラキシーの既往のある人またはアナフィラキシーを発現する危険性の高い人には、アドレナリン自己注射製剤である「エピペン®注射液0.3mgおよびエピペン®注射液0.15mg」の処方が考慮されます。エピペン®は、注射針一体型の注射器にアドレナリンという薬剤があらかじめ充填されたキット製剤です。アドレナリンは人の副腎で作られるホルモンで、心臓の働きを強め末梢の血管を縮めることで血圧を上昇させる作用があります。また、気管支を拡張する作用、粘膜の浮腫を改善する作用もあります。さらに、アナフィラキシー症状を引き起こす体内からの化学物質の放出を抑制する作用もあります。このように、アドレナリン投与は即効性かつ有効性のある最も優先すべき治療法です。
 一方、ハチに刺された場合など症状が急速に現れることがあります。アドレナリンの投与が遅れた場合や、アナフィラキシーの進行が急激な場合にはアドレナリンの投与が効かないばかりか最悪の場合には手遅れとなってしまいます。致死的なアナフィラキシーショックを救命できるかどうかは30分以内のアドレナリン投与の可否が重要とされます。そこで、迅速なアドレナリン投与を行うためアドレナリン自己注射製剤「エピペン®」が開発されました(図3)。エピペン®は本人もしくは保護者が自ら注射する薬剤で、当初の適応はハチ毒に対するアナフィラキシーに対してのみでしたが、後に食物アレルギーや薬物アレルギーにも適応が拡大されました。処方する医師はエピペン®処方医師としての登録が必要ですが、処方される患者側も登録が必要となります。

図3. アドレナリン自己注射製剤「エピペン®
アドレナリン自己注射製剤「エピペン(R)」

 エピペン®には0.3mg製剤と0.15mg製剤の2種類があります。アドレナリン投与量は0.01mg/kgが推奨投与量であり、通常、成人には0.3mg製剤を使用し、小児には体重に応じて0.15mg製剤又は0.3mg製剤を使用します。また、1管中2mLの薬液が封入されていますが、投与されるのは約0.3mLであり、注射後にも約1.7mLの薬液が注射器内に残るように設計されていますので、残量をみて投与しなかったと誤解しないよう注意が必要です。一度注射すると、再度注射しても薬液が放出しない仕組みとなっており、残液があっても二度注射することはできません。注射部位は、大腿部(太もも)の前外側から注射し(図4)、緊急時には衣服の上からでも注射可能です。エピペン®投与のタイミングは、初期症状が発現し、ショック症状が発現する前の時点、もしくは過去にアナフィラキシーを起こしたアレルゲンを誤って摂取し、明らかな異常症状を感じた時点、とされています。
 なお、エピペン®は、アナフィラキシーを発現した患者が直ちに医療機関を受けることができない状況下で症状が進行した場合に、緊急避難として使用する薬であり、決して医療機関での治療に代わり得るものではありません。そのため、エピペン®使用後に症状が回復したとしても必ず医療機関を受診し、適切な治療を受ける必要があります。
 学校においては、教職員は児童・生徒のアレルギー歴や医師処方薬を把握しておく必要があり、医師が処方する薬の中には、アドレナリン自己注射製剤が含まれることを知っておくべきです。医師が記載した指示書(投与のタイミング、注意点、副作用など)や保管(自己管理あるいは保健室での管理など)について確認しておくことが求められます。また、児童・生徒自身がアドレナリン自己注射製剤を携帯する場合は、他の児童・生徒が誤って使用し怪我や副作用が生じることのないように注意しましょう。

図4. エピペン®注射部位
エピペン(R)注射部位

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