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知っておきたい“腹痛(おなかが痛い)”のポイント

目次

II.産婦人科疾患と腹痛

女性の腹痛では、診察医は産婦人科領域の病気がないか常に意識しています。産婦人科領域の腹痛とは子宮、卵管、卵巣など(図3) に由来する腹痛で、妊娠関連(子宮外妊娠など)、感染症関連(骨盤内感染症など)、腫瘍関連(卵巣腫瘍破裂など)など原因は様々です。問診では妊娠・性生 活や月経関連など話しにくい問診をされることもあると思いますが、先にあげた様々な病態に迅速かつ正確にたどりつくために必要な問診ですので、正しい情報 を診察医に伝えることが大切です。

子宮の断面図

産婦人科関連の腹痛に特有の問診

(1)妊娠の有無に関する問診

妊娠の可能性について診察医から質問された際、「コンドームをつけているから」「ピルを飲んでいるから」などの理由から、「妊娠の可能性はありま せん」と断言される女性患者さんも少なからずいらっしゃいます。しかし、例え避妊していても妊娠する可能性は十分あるので、性交渉をしていれば「妊娠の可 能性があります」と答えましょう。問診をもとに妊娠反応検査を行ない、陽性であれば正常妊娠、子宮外妊娠、流産、切迫流産などが考えられます。

(2)性交渉に関する問診

特定のパートナー以外との性交渉歴について聞かれることもあります。これは、クラミジアや淋菌など性行為によって感染する性行為感染症(骨盤内感 染症)の診断のために必要な問診です。不特定多数との性交渉がなければ性行為感染症の可能性は下がりますが、特定のパートナーが菌を保有しているとこの病 気に感染することもあります。

(3)月経に関する問診

最終月経、月経周期、月経量などについての質問されます。月経が遅れている場合の腹痛では正常妊娠、子宮外妊娠、流産の可能性が、中間期であれば排卵痛の可能性が考えられます。月経中の強い腹痛や月経量の増加、期間の延長は子宮内膜症や子宮筋腫が疑われます。

発症様式

突然の腹痛であれば、破裂(子宮外妊娠の卵管破裂や卵巣腫瘍破裂など)、捻転(卵巣腫瘍茎捻転など)、出血(卵巣出血など)が考えられます。卵巣 腫瘍の破裂は、運動や性交時に発症することが多く、卵巣腫瘍茎捻転は急激に体位を変えた時に認めることがあるので、何をしている時に腹痛が出現したかを伝 えることも大切です。数日かけて徐々に痛くなる場合は、骨盤内感染症(性行為感染症)等が疑われます。

腹痛部位と疾患

産婦人科関連の腹痛の多くは下腹部に認めることが多いです。一方、クラミジアによる骨盤内感染症(性行為感染症)では、炎症が肝臓周囲に及ぶことで右上腹部(右肋骨の下部分)が痛むこともあります。

随伴症状と疾患

性器出血の有無や月経歴が診断の手がかりとなります。その他、発熱(骨盤内感染症)、吐気・嘔吐(妊娠関連、卵巣茎捻転)も随伴症状として認められます。

腹痛をきたす頻度が高い産婦人科関連疾患

8.子宮外妊娠

受精卵が、子宮内腔以外の場所に着床して発育することを子宮外妊娠と言います。子宮外妊娠は全妊娠の1~2%に起こり、約98%が卵管妊娠です。 症状は、妊娠週数、着床部位、中絶(流産)の有無により多彩ですが、放置された場合、破裂や流産により死に至る可能性があるため、妊娠の可能性がある女性 の腹痛では常に注意を要します。破裂が迫っている場合、破裂している場合、全身状態が悪い場合には緊急手術が必要です。

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9.卵巣腫瘍破裂、卵巣腫瘍茎捻転(けいねんてん)

卵巣は比較的腫瘍ができやすい臓器と言われていますが、そのほとんどが良性です。しかし、良性であっても注意すべき病態が2つあります。一つは卵巣腫瘍破裂で、もう一つは後述する卵巣腫瘍茎捻転です。

卵巣腫瘍破裂による腹痛は突発性の片側の下腹部痛が典型的で、運動や性交時に発症することが多いようです。症状が強かったり持続する場合は手術が必要になることもあります。

卵巣腫瘍茎捻転は、卵巣を支えている2本のじん帯がねじれることによって起こります。症状としては、急激に起こる下腹部の激痛として現れることが 多いようですが、ねじれが急激に起こらず次第にねじれてくる場合には徐々に痛みが増す形となります。通常は開腹手術による治療が必要となり、捻転を起こし た側の卵巣・卵管を摘出する必要があります。

10.卵巣出血

卵巣出血は、排卵期に卵胞が裂けて出血します。片側の下腹部痛で痛みの程度は軽いことが多いです。少量の出血であれば自然に良くなりますが、症状が強い場合や出血量が多い場合は手術により止血と血液除去を行ないます。

11.骨盤内腹膜炎

骨盤内腹膜炎は子宮、卵管やその周囲の組織が炎症を起こしている状態で、クラミジアや淋菌など性行為で感染する菌が原因となることが多いため性行 為感染症の一種と言われています。不特定多数の人と性交渉歴のある方に数日かけて徐々に進行する下腹部痛や発熱、オリモノ(膿性膣分泌物)の増加を認める とき、骨盤内腹膜炎が疑われます。骨盤内腹膜炎の治療は、抗生剤の点滴や内服で治療します。繰り返すごとに不妊率があがり、3回繰り返すと不妊率が 100%近くになりますので、予防(不特定多数の人と性交渉を行なわない、性交渉時にはコンドームを確実に使用することなど)が大切です。また、せっかく 治癒しても保菌者である性交渉のパートナーから再感染する可能性も十分ありますので(ピンポン感染)、パートナーの治療も必須となります。

12.子宮内膜症

子宮内膜症は、本来は子宮の内側にしか存在しないはずの子宮内膜が、子宮以外の場所(卵巣、腹膜など)で増殖、剥離(はくり)を繰り返す病気で す。子宮の内側からはがれ落ちた子宮内膜は、月経血として膣から体の外に流れ出ていきますが、子宮以外の場所で増殖した子宮内膜はお腹の中にとどまり、炎 症や痛み、癒着の原因になります。症状は、月経が繰り返されるたびにだんだんひどくなる月経痛です。鎮痛剤を使う回数が増えてきた、鎮痛剤が効かない、毎 月のように痛みのため寝込むという人は、我慢しないで早めに産婦人科に受診しましょう。

13.子宮筋腫

子宮にできる良性の腫瘍のことを子宮筋腫といいます。ほとんどは無症状なのですが、症状がある場合は月経期間が長くなったり、月経時の出血量が多くなったり、強い月経痛が起きたりします。思い当たる症状がある場合は産婦人科を受診してください。

14.子宮頚(けい)癌、子宮体(たい)癌

子宮は、膣に近い頸部と、その奥の体部の2つに大別されます。子宮癌にも、子宮頸癌と子宮体癌とがあります。どちらも膣や骨盤へ広がっていき、リ ンパ節から全身に転移したり、近くの臓器へ広がっていきます。初期にはどちらも症状はありませんが、次第に不正出血(月経中じゃないのに出血する)、性交 時痛、オリモノに血が混ざるなどの症状が出現します。これらの症状があれば産婦人科を受診しましょう。無症状でも定期的に子宮癌検診をうけることも大切で す。

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