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家庭で知っておきたい耳鼻咽喉科の救急

目次

D:その他の症状

耳・鼻・のど(咽頭・喉頭)以外にも頭頸部(顔面と頸部)の疾患については耳鼻咽喉科が担当するものがあります。そのうち、救急診療を必要とする可能性がある症状には以下のようなものがあります。

(8)顔面神経麻痺

(1)頭痛、意識障害、手足などの麻痺、ろれつのまわりにくさなどがみられるとき。

中枢性の顔面神経麻痺(脳梗塞脳出血など)

(2)耳介に湿疹などがみられたり、顔面の麻痺以外にあきらかな症状がないとき。

末梢性の顔面神経麻痺(ベル麻痺、ハント症候群など)

顔面神経麻痺への対応

中枢性の疾患からの顔面の麻痺かどうかを、顔面麻痺以外の症状の有無から確認します。

救急受診の目安

めまいと同様に頭痛や顔面以外の神経麻痺の症状があれば、脳出血や脳梗塞の一症状としての中枢性の顔面神経麻痺の可能性が高いため、脳神経外科・ 脳神経内科への救急受診を必要とします。(前記の(1))中枢性でない(末梢性の)顔面麻痺については翌日の診療で問題ありません。

顔面神経麻痺の解説

突然に顔面の片側の表情筋が動かなくなる状態です。(時に両側が同時に悪くなることもあります。)(図12)目の周りや口の周りの筋肉の動きが悪 くなり、目が上手く閉じれなかったり(目を閉じても白眼が見える)、口が上手く閉まらず食事のときに水がもれたり、頬を噛んだりするようになります。笑う と左右の動きの差でゆがんだりしてひきつったようにみえるため、周りの人が先に気がつくこともあります。顔面神経という脳からでて、顔面の表情を動かす筋 肉へ動きの指令を伝える神経が麻痺するための症状です。顔面神経は知覚の神経ではないため、通常、痛みは感じません。(顔面神経痛とは違う病気です。)た だ、顔面神経麻痺の原因の多くは、以前に罹患したヘルペスの仲間のウイルスが神経に住みついていて、体調が弱った時など(風邪を引いたときや夜更かしをし たときなど)にふたたび暴れて(再活性化して)神経に炎症をおこして生じると考えられています。神経の炎症の状態により耳介や外耳に炎症や湿疹が出現する と耳の痛みを自覚することもあります。(図13)

左末梢性顔面神経麻痺の症状 ハント症候群(水痘・帯状疱疹ウイルス)による耳介の湿疹

(9)顔面・頸部の外傷

顔面・頸部の打撲や外傷は耳鼻咽喉科が診療にあたります。このうち、顔面以外の頭部や胸、 腹部にも外傷がある場合は脳神経外科や外科による救命の診療が優先されますのでそちらの救急受診がすすめられます。意識の清明な顔面のみの打撲外傷は耳鼻 咽喉科のみでの治療でよいのですが、目や歯にも障害がおよぶものは眼科や歯科・口腔外科との共同での診療が必要となります。

打撲や骨折の状態により下記のような疾患があります。

(1)耳介が切れているとき。耳介が腫れているとき。

耳介の外傷(耳介の裂傷、耳介血腫など)

(2)視力に異常はないが、眼部の打撲により両目でみるとものがずれて見えるとき。(複視症状)

眼の周囲の骨の骨折(眼窩底骨折、眼窩内側壁骨折など)

(3)開口すると痛みや引っかかりがあるため制限され口が開かないとき。

開口障害を伴う状態(上顎骨や頬骨、頬骨弓の骨折、下顎骨骨折など)

(4)ちょうど鼻の部分のみ打撲して一時鼻出血があったが、鼻が腫れて、鼻の線がゆがんでいるかどうかは不明なとき。

鼻根部の打撲(鼻骨骨折など)(図14)

顔面打撲による鼻骨骨折

(5)口腔内を噛んでしまい、舌が大きく切れてしまったとき。歯ブラシの途中誤ってのどを突いてから出血するとき。

口腔内の大きな裂傷(舌咬症、歯ブラシ等による咽頭の裂傷など)

(6)のどの打撲

声が嗄れて、徐々に息苦しくなったとき。(喉頭の打撲外傷など)

その他、打撲や骨折の部位により、いろいろな症状がみられます。

顔面・頸部の外傷への対応

顔面・頸部以外の場所の異常がないか確認して下さい。出血の状態、視力の状態、開口の可否、呼吸困難や嚥下障害の有無の確認が必要となります。

救急受診の目安

顔面だけでなく頭部、胸部、腹部打撲を起こした場合は一般の救急受診により腹部などの内出血がないことを先に確認するのがよいでしょう。顔面の打 撲のみの場合では、例えば鼻の打撲のみでその他の部位に異常がない場合、鼻血が止まっていれば翌日以後の受診で問題ないでしょう。視力の異常を自覚する場 合は先に眼科での診療がすすめられます。(時間がたつと目が腫れて診療が困難になることがあります。)その他では出血が続く状態や呼吸困難、嚥下障害の症 状がある場合は救急受診がすすめられます。

(10)顔面の痛み

顔面の痛みのうち鼻・副鼻腔からの炎症によるものは耳鼻咽喉科での治療の対象となります。その他、目の病気によるものや歯痛からの痛みの波及のことがあります。

(1)感冒症状あり

鼻内の痛みだけのとき(急性鼻炎など)

頬部の痛みがあるとき(急性副鼻腔炎など)感冒中など汚い鼻汁が続くときなどは副鼻腔炎による痛みの場合があります。

(2)頬部の発赤、腫脹がある。

眼瞼の周囲のみ、目をよくこすっていた後などから症状が生じたとき。(眼瞼からの炎症の波及など)

感冒中、副鼻腔炎の既往がある人が鼻の症状とともに生じたとき。(副鼻腔炎からの炎症の波及など)(図15)

急性副鼻腔炎からの右眼窩内膿瘍による右眼部腫脹

(3)摂食時や開口時に耳の周囲の頬が痛いとき。

顎関節症、流行性耳下腺炎=おたふくかぜなど)

顔面の痛みへの対応

炎症による痛みには耳痛と同様に解熱鎮痛剤での消炎で対応できます。

救急受診の目安

目の症状(視力の低下、眼球の腫れや突出)がある場合は、眼科への受診も必要となります。飲水や摂食困難がある場合は、点滴の治療も必要となりますので救急受診が必要となります。

(11)異物症

異物症とは、もともと体にはない外部の物体が体内に入り込んでとどまってしまう状態のことです。体外からいろいろなものを取り込む耳、鼻、咽頭・喉頭は異物症の多い場所です。

異物が長い間停滞することにより体の機能の邪魔をします。また、炎症反応を生じて摘出が難 しくなることもありますので、異物症がわかった場合、基本的にはなるべく早期に医療機関への受診や問い合わせを行うことがよいでしょう。異物症は、その停 滞している部位や異物の内容により、全身麻酔による手術で取り除かないといけないような状況にもなります。また、手術を行うこと自体が呼吸などの場所のた め生命への危険があるものです。異物症の最善の治療は、異物症をおこさないような予防の心がけが大事と考えます。

(1)耳(外耳道異物):綿棒の先など自分で入れてしまった物(無生物)と、昆虫など偶然飛び込んできた物(有生物)などがあります。

(2)鼻(鼻腔異物):子どもが自分でおもちゃなどを入れてしまうことがほとんどです。

(3)-1 のど=食物の通路(咽頭異物・食道異物):子どもがおもちゃやコインなどを口にくわえて遊んでいて、誤って飲み込んでしまった場合が多いようです。

また、魚の骨などが食事の時にひっかかってしまうことや、部分義歯がはずれて飲み込んでしまうことなどもあります。

(3)-2 のど=呼吸の通路(喉頭異物・気道異物):咽頭・食道異物と 同様に、口にくわえていた物などを誤って吸い込んでしまったときに生じたりします。喉頭にものが詰まると、窒息となるため大変危険です。小さな子どもが ピーナッツなどの豆類を食べていて誤って吸い込むと、当初はひどい咳きこみがでますが、気管支にひっかかると咳症状が収まってしまうこともあります。この 状態でしばらくしてから気管支の炎症からひどい肺炎を生じたりすることがあります。親のみていないところで生じた気道異物では、肺炎になってはじめてわか ることもあります。

異物症への対応

異物により呼吸困難が生じている場合のみ、家庭での救急対応が必要となることがあります。その他は、逆に異物をとろうとして間違った手段を行うとかえって難しくなることがあります。

例えば、魚の骨がのどに刺さったとき(咽頭異物など)には、 一般的にはご飯やイモ類などの丸飲みなどが行われているようですが、以下の理由であまりすすめられません。すなわち[1]咽頭の上方に刺さっていた異物が いったんはずれて、下方の異物となる危険があること。(咽頭の異物が食道の異物となることがある。)[2]咽頭の内腔に異物の表面が見えていたはずなのに 何度も飲み込むことで深く刺さりこみ、内腔側から見えなくなること。(頸部を手術で切開して摘出する必要が生じる。)などです。このため、もし魚の骨がの どに刺さったときに家庭で行ってみる対応としては、うがいをしてのどから吐き出すことを試みるくらいがよいでしょう。2、3度行っても取れない場合は、な るべく早期に耳鼻科への受診をしていただく方が、早道のようです。

気道異物に対する家庭での救急対応について

まず、異物症を発生させないことが1番です。すなわち、小さな子どもさんがいる家庭では、子どもさんが口にくわえて誤飲してしまうサイズのもの は、子どもさんの手が届かない高さや場所に置く必要があります。母子手帳にはどれくらいのサイズが危険であるかなどを記載してあるものもあります。

次に子どもさんがおもちゃの部品などを口に入れて遊んでいるのを発見したときの対応です。このとき、つい大声を出したりすると、子どもさんが驚い て息を吸い込み、気道へ誤嚥を生じたりすることがあります。大声を出すことをぐっとこらえて、他の事に気をそらせながら徐々に口の中から出させるようにし むけます。

発見したときにのどにつかえている場合、喉頭や気管に詰まっている場合は声を出すことができませんので、のどを押さえるしぐさ(チョークサインと呼びます。)をします。また、苦しそうな咳を繰り返して行います。

窒息により顔色が赤黒くなっている場合は、まず大声で助けを呼び、周囲の人を呼び集めます。その上で、のどの奥に異物があるか、口腔から指を曲げて入れて掻きだせるものがあるか試みます。このとき指を噛まれないように注意が必要です。

小さなお子さんの場合は逆さにして、背部を叩く方法(叩打法)や、ある程度大きな子どもさんや大人の場合は、肺に残っている空気を一気に押し出し て異物を喀出させる方法(ハイムリック法)などもありますが、これらの方法を行うには救命救急の対応の研修を行われていなければ難しいでしょう。(詳細に つきましては 広島県医師会のホームページから救急小冊子の「救命(いのち)のリレー」の異物除去などをご参照ください。)

救急受診の目安

痛みのない外耳道異物のみ翌日以後の診療で対応可能です。その他の部位については、呼吸障害や嚥下障害をきたしますので早期に相談受診することが必要です。

特別な異物の例としては、おもちゃなどに使用されるボタン型の電池を飲み込んでしまう、「ボタン電池による食道異物症」 があります。前述したように異物症は一般的に早期の診療で確認し、摘出してしまうことが望ましいのですが、その中でも「ボタン電池による食道異物」は長時 間同じ部位に接触して電流がながれていると、接触している粘膜の腐食が進み食道の粘膜に穴があく(食道穿孔)の危険性が大きくなります。食道穿孔を生じる と周囲に炎症がひろがり重症になります。


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