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家庭で知っておきたい スポーツ傷害

目次

脊髄・脊椎の傷害

概 要
スポーツによる脊髄・脊椎障害としては、腰痛が最も多く、腰痛症や腰椎椎間板ヘルニアはあらゆるスポーツで発症する可能性があります。腰椎分離症は一種の疲労骨折のメカニズムが考えられており、学童の集団スポーツ訓練(野球、サッカー)で高い発生率です。

ラグビーやアメリカンフットボールなど、疾走して相手と当たるスポーツでは神経根(または腕神経叢)の一過性の障害を来す至頁椎捻挫が発生することがあ ります。重篤な頸髄損傷はわが国では水泳での誤った飛び込みで頭部を水底にぶつける受傷機転が多く、その他にラグビー、アメリカンフットボール、柔道など のコンタクトスポーツでのタックル、転倒などの際、あるいは器械体操、トランポリン、スキー、スノーボード、スカイスポーツなど空中を飛ぶスポーツでの床 (地面)との衝突によって生じます。

1.頚椎捻挫
頸椎捻挫は、いわゆる“むちうち損傷”と同様にスポーツ活動によって強い外力が頚部に加わって生じた軟部損傷です。転倒や衝突の多いコンタクトスポーツ で発症することが多いです。プレーで頚部が急激に伸展されて発症した過伸展損傷では、胸鎖乳突筋部に疼痛を来し、屈曲損傷では棘突起間部(首の骨のとがっ た部分と部分の問)や項筋部(首の骨の周囲)、ときに後頭部痛を訴えることもあります。受傷機転が側屈であればバーナー症候群を生ずることがあります。ラ グビーアメリカンフットボールなどのタックルやブロック、レスリングの投げ、相撲のぶちかましなどによって頸部の過度の側屈が生じ、片側の肩が押し下げら れて腕神経叢が伸展されたり、椎間孔で神経根が圧迫されたりして(図1)、片側の上肢にバーナーの火が走るようにしびれや電撃様放散痛がみられます。
図1 バーナー症候群の発生機転

2.脊椎・脊髄損傷
脊椎・脊髄損傷の大半は頚椎・頚髄損傷で、スポーツが原因のものが全体の3~10%といわれています。アメリカン・フットボールやラグビーのタックルや ブロック、ラグビーのスクラムの崩壊、柔道の投げ、野球の頭からのスライディング、乗馬障害飛び越えでの落馬、体操競技での鉄棒や跳馬の着地、水泳のダイ ビング、スキーの転倒、ハンググライダーの墜落など、ボディー・コンタクトや転倒、墜落により発生します。また近年ではスノーボード外傷による頚椎・頚髄 損傷が激増してきています。強い頚部痛あるいは腰背部痛を来し、損傷程度が大きい場合は、損傷椎体以下の麻痺(筋力低下、しびれなど)が生じ(図2)、後 遺症を残すことがあります。
図2 ラグビーによる頚椎・頚髄損傷


3.筋・筋膜性腰痛症
スポーツ選手の急性腰痛症の半分以上が筋・筋膜性腰痛症と考えられています。傍脊柱筋への過度の機械的ストレスあるいは繰り返しの疲労によって傍脊柱筋 の拘縮を生じたり、傍脊柱筋、筋膜を貫く神経が刺激を受け発症すると考えられています。筋拘縮、阻血、疼痛の悪循環に陥ることがありますが、急性期に適切 な治療を行ってこの悪循環を断ち切り、慢性化させないことが大切です。急性期に体動も困難な時期には安静臥床を原則とし、消炎鎮痛剤、湿布や簡易腰椎ベル トなどで治療します。体幹の筋力低下、筋拘縮がある場合は筋力強化、ストレッチングを行い、段階的にスポーツに復帰します。

4.腰椎椎問板ヘルニア
スポーツ活動を行っている人たちの60%以上に腰痛の既往があるといわれていますが、そのうち、腰椎椎間板ヘルニアは約10%です。髄核組織が椎間板外に脱出し、神経を圧迫して発症します(図3)。
図3 腰椎椎間板ヘルニア
腰痛・下肢痛が主な症状で、ときに感覚障害(しびれなど)や筋力低下を来します。治療として最初に行われるのは安静です。また痛みが強い場合は痛み止め やブロック注射などの薬物治療を併用します。これらの保存的治療により大半は軽快しますが、手術を行うこともあり、早期に専門医に相談することをおすすめ します。

5.腰椎分離症

小学校高学年からの成長期に発生し、第5腰椎に好発します。スポーツ選手に発生することが多く、スポーツ動作(特に腰椎の過度の背屈、捻りの繰り返し) による腰椎の機械的疲労が主な原因と考えられています。スポーツ中、スポーツ後の腰痛が主な症状で、腰椎の前屈よりも背屈および捻りが制限されます。ス ポーツの中止・コルセット装着や、体幹筋強化・ストレッチングなど、段階に応じた治療を行うことによりほとんどがスポーツに復帰できますが、将来、腰椎す べり症を生ずることがあり、早期の専門医受診をおすすめします。
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