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家庭で知っておきたい スポーツ傷害

目次

顔面の傷害

スポーツによる顔面傷害
スポーツによる顔面傷害は四肢の傷害に比べますと、決して多いものではありませんが、顔には目や鼻、耳といった重要な感覚器があり、見た目にも重要な部位です。四肢とは違った特徴があります。

サッカー、ラグビー、バスケットボールといったいわゆる接触スポーツでは人体接触による受傷が多く、野球、サーフィンでは用具による受傷が多い傾向にあります。また、スキーやスノーボードでは転倒が原因となります。

以下に部位別の骨折につきその特徴を記します。

鼻骨骨折
顔面骨骨折の中では最も多い骨折です。鼻骨は非常に薄い骨ですので、肘が当たった程度の比較的弱い力でも折れることがあります。

症状
急性期に鼻出血はほぼ必発です。折れた部分を指で押さえると強い痛みを感じます。折れた直後は鼻すじが”く”の字型に曲がっていたり凹んでいたりするのがわかりますが、しばらくすると腫れでわからなくなってしまいます。

経過・治療
変形を伴っていないものは通常経過観察のみですが、変形を放っておくとそのままの形で癒合してしまいます。そうすると、見た目が悪いだけでなく、時には 鼻の通りも悪くなることがあります。通常1週間から2週間で癒合しますので、その前に、なるべく早めに折れた骨を元の位置に戻してやる必要があります。

治療は甜子という道具を使って整復します。整復後は鼻腔内にガーゼを詰め(通常数日間程度)、ギプスなどで鼻をガードします(通常1週間程度)。整復後2週間もしますと、腫れも引き日常の生活には何ら不自由はなくなります。

頬骨骨折
頬骨は顔面中央部の外側を構成していて、休部、弓部と呼ばれる部分から成ります。休部は前方に、弓部は側方に突出しているため、外力を受けやすい骨です。
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症状
受傷初期には腫脹・痺痛があります。特に眼瞼の腫れが著しく、眼球自体に損傷がなくても強膜下(白眼)の出血がみられます。顔面の変形は頬部の扇平化と して腫れが引くにしたがって明らかとなってきます。頬骨の転位や眼苗の下壁骨折によって眼高が拡大し、眼球が陥没します。これに伴って眼球の運動障害も起 こり、複視(ものが二重に見える)をきたすことがあります(眼窟底骨折の項参照)。また顔面に感覚障害がでることがあります。上顎骨に眼窟下神経という感 覚神経が通る出口があり、これが頬骨との接合部に近いため、休部骨折ではこの神経が損傷を受けやすいのです。感覚障害(しびれ)は頬部、鼻の側面、上口 唇、歯肉におよびます。頬骨弓の真下を通っている側頭筋(下顎骨に付着していて口を閉じる時に働く筋肉)に骨片が食い込むことにより開口障害を生じること があります。

治療
転位が軽度で、重要な障害のない場合には手術の適応はありません。軽度の復視や皮膚の感覚障害があっても、自然治癒することも多いからです。

逆に転位が明らかであれば、眼球症状や神経症状が軽くても手術の適応となります。これは機能的な障害がなくても、眼球陥没や頬部の変形が後になってから目立ってくることもあるからです。

手術法
A.体部骨折
通常眉毛の外側、下限瞼の皮膚切開、口腔頬粘膜(歯肉の付け根付近)切開を行い、3方向から転位した頬骨を整復し、小さな金属プレートなどを用いて周囲の骨と固定します。

B.弓部骨折
単独の骨折ならば、側頭部毛髪内や口腔頬粘膜部の切開のみで整復できます。プレートなどによる国定は通常必要ありません。

下顎骨骨折
下顎骨骨折は顔面下部の外傷により発生しますが、顔面骨のなかで唯一関節を有した骨であるため、特異的な骨折の型がみられます。また外傷部位に直接的に生ずる骨折と間接的に対側や関節突起に生ずる骨折があります。

症状
咬合不全(歯の噛み合わせの障害)がみられます。また下顎の変形や歯列の不整がみられます。

治療
良好な咬合の獲得が最も大切な目標となります。そのため骨折部の整復固定の後は顎間固定により校合の安定をはかります。観血的整復(手術をする)と非観血的整復固定術(顎間固定のみをする)があります。
いずれも機能的には良好な結果が期待できますが、形態的には観血的整復固定手術の方がよりよい結果が得られます。手術後の顎間固定はいずれにしろ必須となります。

眼筒床骨折(ブローアウト骨折)
眼部に野球のボール・手拳・膝などがあたることにより生じます。眼窟入り口の骨には骨折が無いのに、その奥の眼球を取り囲む薄い骨がおれる骨折です。
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症状
破損部分から眼球周囲の脂肪組織がたくさんはみ出すと眼球は落ちくぼんでみえます(眼球陥凹)。また、骨折により眼球を動かす筋肉(外眼筋)の動きが制限されると物が二重に見えます(復視)。
知覚神経が走る部分が骨折すると、神経損傷により頬~上口唇にかけてシビレを生じます(眼窟下神経障害)。

治療法
手術をしなくても腫れがとれれば日常生活に不自由のない程度まで症状が改善することがしばしばあります。このため複視だけの症状の場合数週間経過観察をすることもあります。
骨折を修復するには手術が必要となります。骨折部分は紙のように薄い骨なので、通常骨片、軟骨片あるいは人工材料(金属、シリコン、セラミック板など)の移植が必要になります。手術は通常全身麻酔で行います。


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