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救命(いのち)のリレー 新しい心肺蘇生法

目次

III.心肺蘇生法

1.心肺蘇生法とは
心肺蘇生法とは、傷病者が意識障害、呼吸停止、心停止、もしくはこれに近い状態になったとき、命を救うため呼吸と循環を補助する手当をいいます。
体の組織や細胞は、肺で酸素を取り込み二酸化炭素を排出(これを呼吸といいます)してきれいになり、さらに心臓から送り出され(これを循環といいます)た血液から酸素をもらって活動しています(図2)。
図2 呼吸と循環
呼吸が停止したり、心臓の機能が悪くなると、酸素化された血液が来なくなりこれらの細胞は生存できません。特に脳細胞はこの低酸素の状態に弱く、心停止 のまま3~4分放置されるともう機能を回復しません。仮に心臓が回復しても植物状態や脳死になります。(このため心肺蘇生法を心肺脳蘇生法と呼ぶことがあ ります。)

日本では119番通報から約6分(全国平均)で救急車が現場に到着します。しかし救急隊貝が到着してから心肺蘇生法を行っても上述の理由により多くの場 合手遅れとなります。救急隊貝に蘇生を引き継ぐまでの一般市民による救命手当が必須で、これを「救命(いのち)のリレー」と呼びます。近くにいる人々がす ぐ始めることと休み無く続けることが重要なのです。


2.心肺蘇生法の手順
心肺蘇生法を行うにあたっては、まず傷病者を十分に観察し、手順に従って手当を行う判断と勇気が必要です。
観察と判断そして対応は次の項目を順番に行います。

・意識状態
・呼吸状態
・循環状態

(1) 意識状態の観察と判断そして対応
1)意識の確認

傷病者が発生したら、まず意識があるかないかを確認します。傷病者に近づき、「もしもし」「大丈夫ですか」などと声をかけながら、傷病者の肩を軽く叩きます(図3)。
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この呼びかけに対して反応(開眼、応答、四肢の動き)が無ければ、意識障害があると考えます。
肩を叩く際に揺さぶることは奨められていません。交通事故や転倒や墜落などの外傷があると顛の骨(頚椎)が折れていることがあります。


2)助けを呼ぶ(図4)

反応が無く「意識障害がある」と判断すれば、「だれか来て!」と大きな声で救助を求め、119番通報を依頼します。自分一人だけではなく多くの救助者を集めることも必要です。
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3)体位の変換(体の位置)
愚者の状態を観察したり、心肺蘇生法をおこなったりするためには、傷病老の体位を変えて仰向 けにすることが必要です。頚椎を愛護的に扱うために項(うなじ)を片手で支え、もう一方の手を腋(わき)の下に入れ(図5a)、体をねじらないようにして 仰向けにします。(図5b)
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3.小児の心肺蘇生法
(図20 小児の救急蘇生法)
図20 小児の救急蘇生法を行う手順
1歳末満の乳児と1歳以上8歳末満の小児では、体格が成人より小さいので、心臓マッサージや人工呼吸の方法と回数が異なります。


(表)年齢別の心肺蘇生法の比較

 
年    令
心肺蘇法 年齢8歳以上~成人 1~8歳未満(小児) 1歳未満(乳児) 28日未満(新生児)
反応(意識)がなければ助けを求める
(119番通報)
救助者が-人の場合は
1分間心肺蘇生法を行ったのち119番通報
気道確保
頭部複屈あご先拳上法(外傷のときは下顎拳上法)
十分な呼吸をしているか(見る、聞く、感じる)
・呼吸をしている
回復体位にする
・呼吸をしていない
人工呼吸
吹き込みに2秒をかけて2回行う
その後は約12回/分で行う
吹き込みに1~1.5秒をかけて2回行う
その後は約20回/分で行う
吹き込みに1~1.5秒をかけて2回行う
その後は約20回/分で行う
吹き込みに1秒をかけて2回行う
その後は約30~60回/分で行う
異物による気道閉塞※1 上腹部圧迫、または背部叩打、または胸部圧迫 上腹部圧迫、または背部叩打、または胸部圧迫 背部叩打、または胸部圧迫(上腹部圧迫は行わない) 背部叩打、または胸部圧迫(上腹部圧迫は行わない)
循環のサインがあるか
(呼吸をするか、咳をするか、動きがあるか) ※2
・循環のサインがある 気道確保と人工呼吸
・循環のサインがない
心臓マッサージ
胸骨圧迫心臓マッサージと人工呼吸を行う
・胸骨圧迫心臓マッサージの部位 胸骨の下半分 胸骨の下半分 胸骨の下半分
(両側乳頭部を結ぶ線よリ1横指下側)
胸骨の下半分
(両側乳頭部を結ぶ線よリ1横指下側)
・圧迫の方法 片方の手をもう-方の上に置いて両手で 片方で 救助者が一人の場合、下肢の上に乳児を仰臥位で乗せて中指・薬指の2本で胸骨圧迫心臓マッサージを行う ※3 救助者が一人の場合、下肢の上に新生児を仰臥位で乗せて中指・簗指の2本で胸骨圧迫心臓マッサージを行う ※3
・圧迫の深さ 3.5~5cm 胸郭のおおよそ1/3の深さ 胸郭のおおよそ
1/3の深さ
胸郭のおおよそ
1/3の深さ
・圧迫の速さ(割合) 約100回/分 約100回/分 少なくとも100回/分 約200回/分
(90回の圧迫/
30回の人工呼吸)
・胸骨圧迫心臓マッサージと人工呼吸との比 15:2(一人または二人の救助者) 5:1(一人または二人の救助者) 5:1(一人または二人の救助者) 3:1(-人または
二人の救助者)
※1 意識がない場合は医療従事者のみが行う
※2 医療従事者は脈拍のチェックも行う
※3 救助者が医療従事者で二人の場合、両手を胸郭に回して両親指で胸骨圧迫心臓マッサージを行う

 

・乳児では口と、鼻の距離が短いので、救助老は口と鼻を同時に自分の口に含み、呼気吹き込み口 対口鼻人工呼吸を行います(図21)。小児の口を閉じて鼻から呼気吹き込みを行う方法(口対鼻人工呼吸)も有効です。1から1.5秒かけて2-3秒に1回 の速度で吹き込みます。左右の乳頭を結んだ線からお腹側に置いた手、または肋骨下端から頭側に置いた手の中環指が心臓マッサージの圧迫部位です(図 22)。人工呼吸に対する循環のサインが無ければ心臓マッサージ5回、人工呼吸1回を1サイクルとして繰り返します。まず先に1分間の心肺蘇生を行った後 に119通報を行います。
・1歳以上8歳未満の小児では、口対口人工呼吸法を行い、片手で胸骨圧迫心臓マッサージを行います。(図23)

・8歳以上になれば体重も25Kgを上回り、成人と同様の心肺蘇生法が可能です。

・生後1ヶ月末満の新生児では、心臓マッサージを1分間に120回の速度にアップし、心臓マッサージ3回、人工呼吸1回を1サイクルとします。


119通報のタイミングは、以下のように示されています。
成人では、不整脈を呈している可能性があり、一刻も早く119通報を行います。
窒息の患者さんと小児では、呼吸に原因が多く1分間の心肺蘇生を行ってから119通報を行います。

 

4.トラブルシユーティンク
1)心肺蘇生法の中止
次の状況では、行っている心肺蘇生法を中断もしくは中止しても良いことになっています。
(1)十分な自発呼吸、循環が回復した場合
(2)救助者に危険が迫ったり、重度の疲労により、継続が困難になった場合
(3)傷病者が心肺蘇生法を望まないことを正当な手続きのもとに書面で意思表示している場合

2) 感染対策

救急蘇生法は、傷病者の生命を救うために必要な救命手当です。行うことをためらってはなりませんが、血液や体液を介する感染(肝炎とエイズ)が考えられる場合には、心臓マッサージだけを施行してもよいことになっています。
血液に触れないように、あり合わせのビニールで手を保護したり一方弁付きの呼気吹き込み用具の使用が奨められています。

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