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心臓の救急

目次

II.救急的心疾患

II-1 失神発作
失神とは、脳血流が急に減少したために起きる一時的な意識喪失発作であり、心臓に起因するもの、起立時に起きる低血圧、血管緊張に伴うもの、胸艦内庄上昇によるものなどがある。
心臓に起因するものとしては、極度な徐柏ないし頻柏によるものがあり、徐柏に対してはペースメーカーが植え込まれる。その他のものに対しては、薬物治療が試みられる。
応急処置としては、締め付けている衣服などはゆるめ、仰臥位とし、可及的速やかに医師との相談が薦められる。

II-2 低酸素発作
低酸素発作はチアノーゼを呈する主に先天性疾患において、右心室流出部の攣縮により肺血流が急激に減少し、静脈血の酸素加が抑制され、チアノーゼが増 強、うずくまる、呼吸困難さらには意識障害を来すものである。応急処置としては、縮め付けている衣服などはゆるめ、楽な姿勢をとらせ、可及的速やかに医師 との相談が薦められる。専門的対応としては、鋲静とともに酸素補給を行う。治まらない場合は、オピスタン、βブロツカーなどが投与される。

II-3 急性心停止、心原性ショック
心停止は心疾患、呼吸器疾患、脳疾患などの内因性疾患に加え、外傷などの外因性疾患によって惹起されるが、急性心停止に陥ると、心臓がポンプとして作動しなくなり、迅速な蘇生術が試みられなければ、死に終わることとなる。
一方、心原性ショックとは全身性に末梢循環不全の結果、重要臓器に十分な血液が供給されず、細胞が障害を起こして来る病態を云う。従って心原性ショックは心停止に前後して誘発される。原因の除去と末梢循環不全の改善が重要である。
応急処置としては、次章で述べる救急蘇生が行われる。

II-4 不整脈、刺激伝導障害
不整脈、心刺激伝導障害は、心臓をリズミカルに拍動させる働きを司る神経の障害、あるいは心房、心室負荷などの心筋障害が原因となって誘発される。
不整脈は、大きく頻脈型と徐脆型とに分けられる。頻脈型というのは、安静時にもかかわらず運動後のように脈拍数が増加しているもので、中には心房よりの もの、心室よりのものがあり、連続的に異常柏動が続くと上室性頻柏、心室性頻柏と言われ、一過性にでてくるものは期外収縮と言われる。(図2)
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図2 不整脈の発生機序模式図と不整脈の種類
☆:不整脈のフォーカス

心房よりのものは生命に直結するほどのことはあまりないが、心室よりのものは生命に直結するものから放置可能のものまで色々あり、これを正しく診断する には心電図、あるいは24時間ホルター心電図記録という検査が必要である。一方、徐脆型の不整脈と呼ばれるものもある。「打て」という命令を出すのが非常 に遅い洞性徐脈や、洞結節一心房間の刺激伝導が悪いか、働かなくなった洞停止や洞房ブロックがある。更には、心房一心室の伝導が切れたものは房室ブロック と呼ばれる。一般にある程度の運動で消失してしまうような不整脈もあり、このような不整脈は良性で、定期検診だけで特別の治療は必要としない。しかしなが ら、不整脈は突然死、心不全、脳塞栓などの危険性があり、適正な管理、治療が必要である。治療の第一歩として薬物治療が試みられるが、難治性、致死的なも のに対しては外科治療が行われる。また、緊急を要するほどのものに対しては、電気的除細動という処置がなされる。徐舵性不整脈に対しては後述のペースメー カーが植え込まれる。
頻脈性不整脈に対しては、電気生理学的検査という精密検査により治療内容の決定がなされるが、病気によっては頻脈治療用のペースメーカー、あるいは植え 込み型除細動器植え込み術、あるいは副伝導路といった余分の神経の切断術や、悪い心筋の切除術、焼灼術が行われる。

II-5 狭心症、心筋梗塞
心臓の筋肉に酸素や栄養分を送る血管、冠動脈が動脈硬化にて細くなり、心筋に必要な酸素の需要を満たすだけの血流が送られなくなった病態で、その内の代表的なものに狭心症と心筋梗塞がある。
狭心症の代表的なものとしては、運動時心筋の酸素需要にみあう血液を送ることができなくなり、心筋が酸素欠乏となり胸が痛くなる労作性狭心症、睡眠中あ るいは安静時にもかかわらず冠動脈が痙攣をおこし細くなり、血流量が減少し、心筋が酸素欠乏に陥り狭心痛がおきてくる安静時狭心症、異型狭心症がある。
一方、心筋の血流が一定時間以上とだえると、心筋は部分的に死んでしまう、即ち壊死に陥ってしまう。この壊死に陥ったものを心筋梗塞と呼んでいる。心筋梗塞で多くの人達が急死している。
これらの病気の主な原因である動脈硬化は、誕生、成長、成熟、老化の一つの過程の結果であって、生物の宿命でもある。これらの現象の助長因子、即ち、こ れを早めたり増悪を来す因子を抑制するには、食塩、脂肪、美食をとり過ぎない、禁煙、過度のアルコールをとらない、ストレスをためずよく眠ることである。
以前から「風邪は万病のもと」と言われてきたが、ことに糖尿病に関しては、最近では「糖尿病は万病のもと」と言わなければならないほど、糖尿病はこわいものであり、動脈硬化にかぎらず、注意されなければならない。
心筋梗塞になると、発病早期には頻舵型の不整脈の為に急死する危険性が高いので、冠動脈疾患治療室(CCU)に収容される。一方梗塞の部位によっては、 心ブロックを発生することもある。急死をまぬがれても、傷んだ心筋が広範囲の例は、心臓本来のポンプ機能が低下し心不全に陥る。
狭心症の軽症例は薬物治療による管理が可能だが、一程度以上の重症例では、後述の経皮的経管的冠動脈拡張術(PTCA)や大動脈一冠動脈バイパス(A-C バイパス)がなされる。
今までなかった突発する胸部圧迫感、胸の蹄め付けや胸苦しさを感じるとか、これまで経験してきた狭心痛とは異なった新たな胸痛を感じた時は心筋梗塞が疑われ、医師への受診が薦められる。

II-6 心筋梗塞合併症
心筋梗塞直後は先にも述べた如く不整脈および心不全が問題であるが、急性期に引き続いて、場合によっては心筋梗塞で傷んだ心臓の外側の壁が破れ、心破裂 に陥り急死したり、心臓の内側の壁が破れると心室中隔穿孔、弁膜の乳頭筋が切れると弁閉鎖不全症となり、心不全に陥ることとなる。迅速なそれなりの適切な 対応が必要である。
心筋梗塞後は、定期的検診を受けるとともに、心室が瘡のようになる合併症などの発生が疑われた際は、精密検査が薦められる。

II-7 心肺危機
肺の病気がもととなり、心臓の方に負担がかかってくる病気がある。
急に発生してくるものとしては、広い範囲に肺動脈がつまってくる肺梗塞、慢性のものとしては肺気腫、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患といった肺の病気の 結果、肺動脈の血圧が著しく高くなり、結果的に右心室に負担がかかり発生してくる。即ち、肺性心は二次的な産物ということになる。二次的産物のもととなる 原疾患の管理が重要ということになるが、多くの場合、原疾患の根本的治療は不可能で、治療の中心は症状に対する対症療法となる。
安静、酸素吸入を基本とし、体が腫れてきたりするほどの右心不全に対しては利尿剤、強心剤が投与される。
肺梗塞に対しては血栓溶解療法、状態が許せば手術的に塞栓、血栓を除去する。ことに肺梗塞は長期ベッドに寝ている患者に発生し易いこともあり、大手術の後などでは予防的に適度な下肢の運動、その危険性のある例では血液を固まりにくくする薬なども使用することがある。
ことに肥満型の人で、下肢の静脈炎などがあり、立ち上がった際、急に呼吸困難や失神が発生したときは、肺梗塞が疑われ、迅速な医師との相談が必要である。

II-8 高血圧緊急症
子供では血圧140/90mmHg 以上、成人であれば150/100mmHg 以上となると高血圧症と診断される。この原因は動脈硬化症、腎臓の病気、内分泌の病気、中枢神経の病気、ある種の先天性心疾患などであり、原因のはっきり しているものは二次性高血圧症、原因が不明で、加齢とともに血圧が漸次上昇していくものを本態性高血圧症と呼んでいる。
成人の高血圧症の殆どのものは、本態性高血圧症である。血圧が高くなると、それをこえて血液を全身に送り出さなくてはならなくなり、心臓に負担がかか り、肥大がみられるようになり、左心不全、心臓死という結果に陥ることとなる。脳出血、腎臓病なども合悌する。腎臓病は、高血圧がその原因となり、また、 結果ともなってくるものであり、最終的に腎臓の動脈硬化は一層進展し、治療困難な悪性高血圧症といわれる事態にまでいたることとなる。眼底出血という言葉 を耳にすることがあるが、これも高血圧症が関与しており、発病を気づいていることもあり、気づかないこともあり、ある程度をこえると著しい視力障害に陥っ てしまう。心筋梗塞とまぎらわしい大動脈解離といって、大動脈の壁がたてに裂けていく急死の原因となる病気を誘発することもある。このように血圧が高い と、体の大切なところに悪いことばかりをもたらし、その管理にはことに眼が向けられなければならない。一般的には、前述の動脈硬化促進因子の除去につとめ ることである。ついで、ことに拡張期血圧100mmHg をいつも上まわっている例は治療が必要である。また、頭重感、めまい、耳鳴りのある例は定期的に血圧測定、治療を受ける必要がある。高血圧と診断され、治 療を開始するが、服薬により血圧を正常範囲内に保つということであり、病気自体が服薬で治ってしまったというわけではない。しばし「高血圧が治った」とい う言葉を開くが、それを開いて血圧を測定してみると200/110mmHg といった例が時々ある。季節、生活様式などにより服薬中の血圧は多少の
変動をするものであり、服薬開始で高血圧症が治ってしまうということはない。そこで、症状がとれたということで素人判断で薬を止めたり、減らしてはいけな いことを、特にここで強調しておく。こうした経過の中で、色々なストレスなどで急激に血圧が上昇し、心不全などを起こして来ることがあるが、これが高血圧 緊急症で、頭痛、呼吸困難などを訴え、迅速な医師との相談が薦められる。

II-9 大動脈解離
動脈硬化やその他先天的な組織の脆弱、自己免疫疾患、妊娠、外傷などにより、大動脈の壁の中の中膜部分が局所的壊死に陥り、裂けると、大垂朋舵解離とい うことになる。本疾患は血管が裂ける部位により症状などに差があるが、心臓に近い大動脈の解離では、ショック、心タンポナーデ、心不全により生命が脅かさ れる。心臓からやや離れた大動脈解離であれば、大出血により生命が脅かされるほか、下半身虚血、麻痺、腹部臓器血行障害、腎障害、下肢血行障害がもたらさ れるといった非常に垂篤な疾患である。
原則的には、診断が下され次第降庄治療を開始するとともに、心タンポナーデ、心不全、大出血を呈する例には、直ちに手術的治療が行われる。その他の場合 でも、降庄治療中に破裂の危険性のあるものや、重要臓器の血行障害が発生してくる場合にも解離部の人工血管置換術が行われる。
胸や背中に突発的に激痛が発生した時は大動脈解離が疑われ、迅速なる医師との相談が薦められる。

II-10 心タンポナーデ
炎症、悪性腫瘍、心筋梗塞合悌症や外傷により心臓を包む袋、即ち、心嚢の中に急激にしかも大量に心嚢液や血液が貯留すると、心臓の機能が抑制されること となる。まず注射針で貯留液を抜くが、繰り返して液が溜まってくるものには心外膜切除術、心嚢一胸腔開窓術といった手術が行われ、ことに外傷例では出血部 位の処置が必要となる。


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