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こころの救急 -不安・興奮・錯乱-

目次

V こころの救急を支える「精神保健法」


こころの救急において最も重要で深刻な問題は、当の患者さん本人が治療を拒否したり、自分では治療を受けるべきかどうかを判断できなかったりする場合が少なくないということです。
特に問題となるのは、精神科医が診察した結果「このまま治療を受けずにいると、周囲にひどい迷惑をかけたり、他人に危害を加えたりするかもしれない」と か、「放っておくと自殺しかねない」などと判断されるような重症の場合です。このような場合には、緊急入院が必要なことが多いのですが、そういう時に限っ て、当の患者さんに治療を受ける意志がないことが多く、入院を決定できない事態がしばしば起こります。
そこで、救急の場合も含めて、こころの障害の入院治療に入る場合には、「精神保健法」という特別の法律に従うことになっています。この法律では、患者さ んの人権を軽視した強引な入院治療になることがないよう、精神科医が一定の手続きを踏むことが決められています。その主な入院形式について説明しましょ う。
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1)任意入院
こころの障害の場合も、一般の病気と同様、患者さん自らの意志で入院して治療を受けていただ くのが最も望ましいことはいうまでもありません。病状と今後の治療方針をよく説明したうえで入院治療に同意していただければ、〈任意入院〉という形式をと ります。手続きとしては、同意書に患者さん自身で署名捺印していただくだけです。自らの意志で入院を希望されたわけですから、当然自らの意志で退院も可能 です。ただし、精神科医(指定医)が入院治療の継続が必要と認めた場合には、一定期間は入院していなくてはならないことがあります。

2)医療保護入院
こころの障害が重症で医療および保護のため入院が必要と思われても、患者さんに治療を受ける 意志がないときには、問題は複雑です。先に述べた「堅い救急」では、こうした事態が多くなるのが実状です。このような場合に精神保健法では、精神保健指定 医という一定の資格を持った医師が入院が必要と判断した上で、患者さんの保護者の同意があれば患者さん本人の同意の有無に関わらず、〈医療保護入院〉とい う形式で入院治療に入ることができることになっています。つまり、専門医師の判断と保護者の同意があってはじめて、患者さんの意志を越えた強制入院が可能 になるわけです。なお、保護者がいない患者さん(例えば単身者など)の場合は、住所地の市町村長に届けを出して、保護者になってもらいます。こうした手続 きを踏むことで、患者さんの人権をできる限り尊重する仕組みになっているわけです。

3)措置入院
今にも自殺を図ったり、他人に危害を加えたりしそうなくらい混乱している最も重症の患者さん の場合は、自分自身の状態を認識できないため精神科への受診を拒否され、ご家族の手に余ることもあります。このようなときには、まずご家族だけでも、精神 科専門医あるいは後に示した相談窓口にご相談ください。それでもうまくことが運ばず、迅速かつ確実な入院治療が必要な場合には、110番通報で警察に患者 さんを保護していただいたうえで、都道府県に緊急精神鑑定を要請してもらいます(精神保健法の24条通報)。そして、都道府県から委託された精神保健指定 医の資格を持った2人以上の医師の判断が「入院が必要」ということで一致すれば、患者さんの意志に関わらない〈措置入院〉という強制的な入院形式が法的に 認められています。ただしこれは、あくまでこころの障害における最悪の事態を想定した最後の手段としての入院形式であり、安易に適用されることはありませ ん。
ちなみに、広島県の精神科入院患者さんの55.9%は任意入院、37.0%が医療保護入院、3.7%が措置入院です(平成3年度統計)。
このように、こころの救急は「精神保健法」によって支えられ、またそれによって患者さんの人権も守られています。

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