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泌尿器科の救急 ―血尿― (付:泌尿器科的救急疾患)

目次

III.血尿を来す疾患

1.肉眼的血尿
(1) 腎腫瘍

腎臓の実質に出来る腫瘍で、大多数は悪性腫瘍です。主な症状は3つで、3大主徴と言われています。
1)肉眼的血尿(60~70%の人に見られる)
2)側腹部の腫大(腫れ)
3)側腹部の序痛・腰痛
しかし、初診時に3つ全部揃って受診される人は少なく、肉眼的血尿で受診される人が殆どです。この血尿の特徴血尿期休止期が交互に来ることです。つまり血尿があったり止まったりしますので、止まれば治ったと思い、受診がついつい遅れてしまい勝ちです。ですから特に60才以上の人で、無症候性肉眼的血尿があれば、すぐに専門医を受診することです。
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(UROLOGY ILLUSTRATED より)

 

治療は、腎臓を摘出するのが一番良い方法です。時に腎臓摘出する前に、腎動脈を閉塞させ(腎動脈塞栓術)、腎臓の縮小を図り手術をやり易くする事もあります。
放射線療法、化学療法は一般に無効ですが、インターフェロンは有効と言われており、延命効果が期待できます。


(2)膀胱腫瘍

泌尿器科ではよく見られる腫瘍で、初期に発見されれば治癒することもあります。50~60歳代の男性に多い疾患で、初期症状無症候性肉眼的血尿で す。「2~3日、血尿が続いたんですが、きれいになったので、そのままにしていました。最近また血尿が続きますので受診しました。」と訴えて来院される方 がよくあります。この様な場合は、初期症状に気付かず、放置していたため病気が進行し、治療を難しくする事があります。手遅れにならないよう、一度でも血 尿があれば、専門医を受診しましょう。また膀胱炎をたびたび繰り返す人、治りにくい人も、一度は専門医を受診して下さい。
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(UROLOGY ILLUSTRATED より)

 

治療は手術療法が一般的です。初期では開腹せず経尿道的に手術が行われますが、進行性、多発性であれば、膀胱を完全に取り除き尿路変更術が必要になってきます。
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(UROLOGY ILLUSTRATED より)
・経尿道的手術:尿道から切除鏡を挿入しながら膀胱腫瘍をよく観察し、切除導子で切除していきます。なお、前立腺肥大症の場合も、同じ様な方法で前立腺を切除します。

 

その他、化学療法、放射線療法も有効ですが、手術療法と併せて、これらの治療を行う場合もあります。

(3)特発性(本態性)腎出血
これは原因不明の腎出血で、一般に片側性の肉眼的血尿を示します。「特発性」、「本態性」は原因不明を 意味し、現在の医学レベルでは原因がつかめない上部尿路(腎~尿管)からの出血の総称で、特に診断名というわけではありません。従って医学の進歩につれ、 この「特発性」という言葉は将来消滅する可能性があります。要するに、出血するからには何らかの原因が必ずあるはずですが、種々の検査を行っても原因がつ かめない、この様な腎臓からの出血を特発性腎出血と言います。
一般に男性に多く、発生頻度は泌尿器科外来患者の約1%前後と言われています。また、腎臓の働きに関しては全く正常で、健康人と何等変わることはありません。
治療は「安静」が第一です。出来れば食事、トイレ以外はベッドで休まれる方がいいでしょう。また「ストレス」の解消も大切なことです。薬物療法は止血剤が主で、症状にあわせた治療になります。


(4)尿道カルンケル

トイレに行ったとき「チリ紙に血が付いた」と訴え受診される人に多い病気で、尿道の入り口(外尿道口)に出来る小さな腫瘤です。これは慢性炎症によって出来た良性腫瘍で、癌ではありません。中年以降の女性に多く、自覚症状(痛みや、痒み)も殆どありません。
治療は腫瘤の切除あるいは、電気焼灼(電気で焼く)を行います。小さければ外来診療で処置が出来ます。


(5)前立腺癌

症状は前立腺の肥大による排尿困難と血尿ですが、初期には自覚 症状は全く無く、血液検査で偶然に発見されることが多いようです。血液中の前立腺特異抗原を測れば比較的簡単にわかりますので、癌年齢に達した人は検診を受けられる方がいいでしょう。
また、前立腺癌は骨に転移を起こしやすい病気ですから、「腰痛」を訴える患者さんに時々みられますので注意して下さい。
治療は進行性の場合を除き、内分泌療法が主流になっています。最近、内分泌療法と前立腺全摘術を組み合わせた治療法も多く行われています。


(6)出血性膀胱炎

排尿時に出血を伴う急性膀胱炎で、女性の患者さんに多く、血尿に驚き受診されます。小児の膀胱炎も血尿が先行することが多く、両者とも自覚症状はあまり無いようです。治療は安静と水分の摂取、更に抗菌剤の服用で十分です。


(7)尿管結石

尿管結石の痛みを経験された方はおわかりと思いますが、突然の激しい差し込むような激痛で(疝痛発作)、気分が悪くなったり、脂汗が出たりします。狂うような痛みと言う人もあります。この種な特徴的な痛みと、血尿があればほぼ診断がつきます。腎臓結石、膀胱結石ではそれほど痛みがありません。
治療は鎮痙剤、鎮痛剤が主になります。自然排石の可能性が無ければ、体外衝撃波(手術をしないで結石を壊す)による治療が行われます。


2.顕微鏡的血尿
一般に検診で行われている血尿チェックには、潜血反応試験紙を使用しますが、これは顕微鏡でみる赤血球数に、ほぼ比例しています。正常尿を鏡検すると赤 血球は、殆ど認められませんが、一視野(400倍)に1~2個程度の赤血球の存在は、正常範囲であると言われています。また、潜血反応(±)、偽陽性の判 定は陰性と考えてよく、心配することはありません。しかし、複数回の検尿を行い確かめた方がいいでしょう。

(1)慢性膀胱炎

日常よくある病気ですが、自覚症状に乏しく下腹部の膨満感、不快感、或いは下腹部が重い感じがする、といった訴えが多いようです。尿検査でも潜血反応陽性以外、感染尿を示す所見はなく「きれいなオシッコですね」と言われる事があります。
この様な人に膀胱鏡検査をしますと、慢性炎症所見が認められ、初めて慢性膀胱炎の診断がつきます。膀胱炎の治療をすれば顕微鏡的血尿も消失することがあります。


(2)Ig-A 腎症(アイ・ジー・エイ腎症)

わが国に多い糸球体腎炎の一つで、糸球体のメサンギウムにIg-A の特異的な沈着が見られるので、この種になづけられました。
若年者に多く、症状は「顕微鏡的血尿・蛋白尿・血清 Ig-A の高値」です。検尿では血尿・蛋白尿が続きますが比較的予後はいいようです。大切なことは3~6カ月毎に、定期検診を受けることです。


(3)尿路結核

腎臓、膀胱、前立腺、精巣上体等(副睾丸)に結核菌が付き、感染を起こす病気で、以前に肺結核を思った人に多いようです。検尿で血尿、感染尿が続き治りにくい時には、この病気のチェックが必要になります。膀胱結核では強い頻尿がみられます。
尿中の結核菌を証明すれば診断が出来ますので、尿の結核菌培養を行います。
治療は肺結核と全く同様ですが、高度の膀胱萎縮、腎臓機能障害がみられれば、手術が必要になってきます。
尿路結核の発生機序は肺結核を原発巣として、血行性に結核菌が腎に運ばれ、付着し発症します。腎臓から排泄された結核菌は尿管を通り膀胱に達し、膀胱結核となります。精巣上体は一部血行性に感染することもあります。
感染経路図
(UROLOGY ILLUSTRATED より)


(4)無症候性血尿を示す主な疾患
1)尿路系悪性腫瘍
2)腎・膀胱結核
3)腎・尿管結石
4)内科的疾患(腎炎・Ig-A 腎症など)
5)先天性尿路奇形


(5)臨床統計(広大泌尿器科)
1. (1)無症候性顕微鏡的血尿における主な疾患名

診断名
症例数
腎結石
21
内科的疾患
12
腎嚢胞
9
腎下垂症
4
尿道カルンケル
3
浸潤性膀胱癌
2
尿管結石
2
膀胱尿管逆流
2
膀胱癌
1
腎結核
1
放射線性膀胱炎
1
腎杯憩室
1
馬蹄腎
1
前立腺肥大症
1
泌尿器科的異常なし
73
134

広島大学泌尿器科統計(1986~1987)

2.(2)血尿の性状と原因別疾患
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広大泌尿器科1986~1987統計(434疾患)

 


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