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眼の救急 -いつまでも健やかな視力を-

目次

II.深夜、休日でもすぐに眼科受診が必要な疾患

今すぐ急いで眼科を受診しなければならない疾患には、外傷、緑内障発作、網膜中心動脈閉塞症の3つがあります。これらの疾患の場合は、たとえ、深夜や休日であってもすぐに眼科を受診しなければならず、次の日まで待つことはできません。
では、これらの疾患について順に説明します。

今すぐに受診しなければならない疾患
1.外傷
2.緑内障発作
3.網膜中心動脈閉塞症

1.外傷
外傷とは眼のけがのことです。外傷には、何かがちょっと眼にあたったといった軽症のものから、眼が切れたり裂けたりする重症のものまでいろいろありま す。患者さんの立場では、痛みが強いほど重傷であると考えがちですが、必ずしも痛みと重症度が一致するとは限りません。痛みがそれほど強くない場合でも、 医学的には急がなくてはならない外傷もあり、このような外傷こそ注意しなくてはなりません。
では、急いで眼科を受診しなければならない眼の外傷にはどんなものがあるでしょうか。それは穿孔外傷と薬物外傷の2つです。
急を要する眼外傷
1.穿孔外傷
2.薬物外傷

(1) 穿孔外傷

穿孔外傷というのは、けがによって、眼球に穴が開いたり、眼球が裂けたりすることです。放置すると傷口から眼球の中身が外に出てしまい眼球の形が保てなくなったり、傷口から眼の中に細菌が入り眼全体が化膿したりして、最後には失明します。
大きな傷の場合は患者さんも急いで眼科を受診しますので問題はありませんが、傷口が小さかったり痛みが少なかったりした場合は、眼科受診が遅れてしまう こともあります。たとえ傷口が小さくても、また痛みが少なくても眼球が穿孔している場合は急いで眼科を受診しなければなりません。

温かい涙は要注意

外傷によって眼球に穴が開いた場 合、眼球の中にある液体が眼の外に漏れてきます。眼球の中の液体は涙より温かいため、この液体が眼の外に漏れてきた場合、患者さんは「温かい涙がでてき た」と言われることがあります。外傷によって温かい涙がでてきたと感じるときは、たとえ傷口が小さくても眼球に穴があいている恐れがあり、注意しなければ なりません。

痛みだけでは判断できない

外傷の場合、痛みの強さ と重症度が一致するとは限らず、痛みだけで重症度を判断することはできません。けがをした瞬間は痛みを感じますが、その後は痛みを感じなくなったり、ま た、眼を閉じていると眼の痛みがやわらぐことがあるためです。したがって、痛みがなくなったからといって安心してはいけません。

異物に注意

穿孔外傷に伴って異物が眼球の中に入ってしまうことがあります。眼科で診察することの多い異物はほとんどが鉄片です。異物が眼球を突き破るには、異物がある程度の重みをもち、断瑞が鋭いということが必要だからです。
私たちの身の回りで、鉄片が眼の中に入るというのはどのような場合でしょうか。意外かもしれませんが、実は電動草刈機で草刈りをしている時に起きること が多いのです。「電動草刈機で草を刈っている最中に石をはねてしまい、石の破片が眼に飛んできた」といって患者さんが受診されます。この場合、石が飛んで くるのではなく、草刈機の刃が欠けてその破片が飛んでくる場合が多いのです。鉄の破片は重く尖っているため眼球を突き破る危険が高くなります。
鉄片が眼を突き破るのは一瞬であるため痛みを感じるのも一瞬で、その後は痛みを感じることが少ないため、診察が遅れることがあります。これを放置すると鉄片によってできた傷や鉄片から発生する錆(さび)によって失明してしまいます。

予防が大切

穿孔外傷の治療は、眼球の裂けたところや穴の開いたところを縫合することが原則です。また、眼の中に入った異物は手術によって取り除かなければなりません。
しかし、穿孔外傷の場合は治療よりも予防が大切です。危険な作業をする際、特に電動草刈機で作業をする際には保護メガネをかけることが必要です。ちょっとした心がけで眼を守ることができます。


(2)薬物外傷

眼の中に、洗剤、化粧品、殺虫剤、薬品などが入ることを薬物外傷と呼びます。薬物の種類によって救急度が異なりますが、一刻の猶予もならないのが、アルカリ性の薬物が眼に入った場合です。

アルカリ性薬品は眼を溶かす

アルカリ性の薬品が眼に入ったのを放置すると失明します。というのは、アルカリ性の薬品にはタンバタ質を溶かす作用があるからです。眼の中に入ったアル カリ性の薬品は眼の表面をどんどん溶かしながらだんだん眼の奥に浸透し、最後には眼に穴が開いてしまいます。たとえ、穴が開くのをくいとめたとしても眼が 白く濁ってしまい視力障害が残ることもあります。

すぐに洗眼を

万一、薬品が眼に入った場合は、すぐに自分で洗眼をすることが重要です。眼科受診の前に何は おいてもすぐに流水によって洗眼しなければなりません。アルカリ性の薬品が入った場合はアルカリを中和するために酸性の液体で眼を洗ったほうが良いと思わ れるかもしれませんが、酸性の液体を探す時間があったら、その前にとにかく水道水でも何でもいいですから充分に洗眼することです。しかも、洗眼は短時間で はなく、少なくとも5分以上かけて行わなくてはなりません。洗眼という応急処置をした後、すぐに眼科を受診します。
薬物外傷の場合も、治療よりも予防が大切です。危険な薬品を扱うときは防護メガネをしなくてはなりません。防護メガネがなければサングラスなどでもかまいません。サングラスひとつで、薬品が直接眼にはいるのが防げます。


2.緑内障発作
「突然、眼痛、頭痛、嘔吐などの症状が起き、これらの劇臭が治まった後、眼が見えなくなっていたことに気付いた。」という病気があります。これは急性緑内障発作と呼ばれる病気です。 
急性緑内障発作
急な眼庄上昇   →   種々の症状
(眼痛、頭痛、嘔吐、視力低下)
1日から数日で失明

緑内障とは、眼の圧力(眼庄)が高くなる病気で、慢性と急性があります。慢性の緑内障という のは、徐々に眼庄が高く考り、数年から数十年かけて視力や視野が徐々に悪化してしまう病気です。一方、急性緑内障は、急激に眼庄が高くなり、眼痛、頭痛、 嘔吐、視力低下などが起き、適切な治療を行わないと、1日から数日で失明してしまう怖い病気です。
他の病気と間違えられやすい
緑内障発作の症状は、眼痛、頭痛、嘔吐、視力低下などです。しかし、眼や頭の痛みのために眼を閉じていることが多く、視力低下に気付かないことがありま す。また、頭痛や嘔吐のために脳外科や内科を受診することが多く、頭など眼以外の検査をしているうちに、舞遅れになって失明してしまうこともあります。眼 の症状に早く気付き、眼科で適切な治療を受けなければなりません。
点満、レーザー光線で軽快
治療は、眼圧を下げる点滴とその後に行うレーザー光線による治療が主体となります。点滴は30分から1時間程度、レーザー光線による治療も10分程度で 終わります。眼痛、頭痛、嘔吐などの症状は、これらの治療によって、うそのように速やかに治まります。しかも、レーザー治療は観血的な手術ではありません ので、外来通院でも可能です。ただ、診断が遅れたりするとレーザー治療が行えないこともあり、この場合は眼を切らなければならない緑内障手術を行わなくて はならず、1日から数日の入院が必要になります。
片方の眼に緑内障の発作が起きると、反対の眼にも緑内障発作が起きる危険が高くなりますので、発作の治療が落ち着いた後には、反対の眼にも発作予防の治療を忘れずに行う必要があります。この場合もレーザー光線による治療ですみます。


3.網膜中心動脈閉塞症
眼に血液を送っている血管の総元縮めが網膜中心動脈です。この網膜中心動脈が突然詰まってしまう病気が網膜中心動脈閉塞で、眼に血液が届かなくなるため眼の神経が死んでしまいます。急に眼の前が真っ暗になり見えなくなってしまいます。
網膜中心動脈閉塞
血管の閉塞 → 突然の視力低下
(真っ暗)

数分で失明の危機

眼の神経は弱いため、血液が数分から十数分の間、通わなければ死んでしまいます。しかも、眼の神経は中枢神経と発生 の成り立ちが同じですので、一度死んでしまうと、たとえ治療によって血液が通うようになっても生き返ることはありません。したがって、眼の神経が死んでし まう前に治療を開始しなければなりません。しかし、実際問題として数分から十数分のうちに眼科を受診することは不可能です。救急車を呼んで信号ノンストッ プで受診しても不可能でしょう。では、この病気になった場合、急いで眼科を受診しても無駄なのでしょうか。
あきらめてはいけない

上記の問いに対する答えは、ノーです。数分から十数分を過ぎても急いで眼科を受診することが必要です。ときに、十数 分の時間を過ぎていても視力が戻る可能性があることがあります。というのは、血管が完全に詰まったように見えても、わずかながら血液が通っていることがあ るからです。この場合は、眼の神経はまだ完全には死んでおらず、いわゆる危篤状態にとどまっています。神経が完全に死んでいなければ、治療によって危篤状 態から脱することもあります。したがって、十数分の時間を過ぎていてもあきらめてはいけません。
血管が詰まる原因となった疾患の治療も大切
治療は、眼の血管を広げる薬や血栓を溶かす薬の点滴が主体です。一方、この病気は、高血圧、動脈硬化、心臓病のある人に起きやすいので、眼の治療と並行 してこれらの疾患の検査と治療を行う必要があります。このことは、反対の眼に網膜中心動脈閉塞が起きないようにすることにもなります。


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