禁煙コーナー

禁煙に関するコラム

喫煙ブースを撤去しよう!-タバコ・改正健康増進法と新型コロナ感染-

JA広島総合病院
渡 正伸

 多くの人々が楽しみにしていた東京オリンピックは残念ながら延期となりました。IOCとWHOは受動喫煙の無い環境でオリンピックを開催するべきとして、今までに開催されたオリンピックでもその開催都市に罰則付きの受動喫煙防止法の制定を義務づけてきました。東京のみならず日本全体で受動喫煙の無い環境を確立し世界の人々を迎えるために、健康増進法が改正され、第一種施設(学校、病院、行政機関など)では昨年の7月1日から、また第二種施設(飲食店やホテルなど)では今年4月1日から施行されています(厚生労働省HP https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000189195.html)。
 飲食店などの多くの施設で屋内禁煙になっているはずですが、新型コロナウィルス感染のインパクトが凄すぎて、まったくニュースとして取り上げられず、話題になっていません。多くの飲食店で本当に屋内禁煙となっているのか?確かめたくても3月下旬から夜の街クラスターの発生以後は飲食店や繁華街が閑散とし、さらに非常事態宣言後は飲食店に休業要請が出たため、実情を確認できない状況です。禁煙推進を叫ぶ以上に新型コロナウィルス感染で世の中は深刻になっています。そして皮肉にも今の非常事態宣言下では人々の活動が制限されているので喫煙する機会も減ってタバコ消費が減少しているかもしれません。逆に巣ごもり状態で喫煙本数が増えている可能性も憂慮されますが...。また地球レベルでは期せずしてCO2排出量の削減につながっているという情報もあるようです。
 改正健康増進法では屋内禁煙が原則となりますが、飲食店などでは喫煙専用ブースを屋内に設置可能という抜け道があり問題と考えています。われわれは昨年に県議会議棟の屋内に、この喫煙専用ブースが設置されると聞き、これに反対する要望書を提出しましたが、理解が得られず設置されたと聞いております。新型コロナウィルスの感染防止対策の柱は密閉、密集、密接の3密を避けることです。しかしどうでしょう、喫煙専用ブース内をイメージしてみてください。新型コロナ感染者が中にいたら、喫煙ブースがクラスターの発生場所となります。新型コロナウィルスは短期間で片が付きそうにもありません。コロナ災禍を機会と捉えて既存の喫煙ブースは入室禁止、いやこの際撤去するべきではないでしょうか。実際に北海道や東京など全国で喫煙ブースの閉鎖が実施されています。また福井県では喫煙ブースで感染した疑い症例が報告されています。
 受動喫煙防止の動きに対して紙巻きタバコに代わり加熱式タバコが注目されています。これなら許容されるのではないかと、昨今TVやネット上などの広告が目立っています。加熱式タバコはタバコ葉を加熱して発生するエアロゾルを吸引します。明らかな煙やニオイはありません。しかしながら紙巻きたばこ同様に、そのエアロゾルには多種類の発癌物質やニコチンを含んでいます。ニコチンは脳に作用し依存症を起こし、また血管を収縮させます。カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校心血管研究所の2017年の研究では、実際にヒトが使用する条件下でアイコスエアロゾルをラットに吸引させると、紙巻きタバコ喫煙と同程度の著明な血管内皮機能低下が発生することが明らかにされました。「加熱式タバコ製品の使用によって、紙巻きタバコ喫煙による心臓血管系への悪影響を避けられるとは言えない」と結論づけています。
 新型コロナウィルス肺炎では喫煙やCOPDは重症化のリスクと言われています。さらに脳梗塞や川崎病類似疾患が報告されるようになり、血管内皮障害が原因として考えられています。新型コロナウィルス肺炎も血管内皮障害で血管透過性が亢進し間質浮腫を生じると理解されます。前述の研究結果にあったようにニコチンが血管内皮機能低下を起こすことを鑑みると、喫煙者が COVID-19 に感染するということは血管内皮にとって火に油を注ぐに等しいと考えられます。
 今回、市長や知事、自治体職員などから医療従事者に感謝のオベーションが送られ話題となっています。私も院内感染に携わっており感謝される側にいる一人ですが、妙な違和感を感じます。早い段階で政治や行政がより適切な対策やメッセージを発信していたら、もっと早期診断、早期隔離&治療、蔓延予防ができたのではないかと思うわけです(私見)。「政治や行政がちゃんとタバコ対策をしてくれたら多くのタバコ関連疾患でわれわれが苦労することも、患者さんが苦しむことも無いのに」、とタバコ行政と重ねてしまうからかもしれません。

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