禁煙コーナー

禁煙に関するコラム

飲食店における禁煙について その3

広島県医師会 常任理事
山田 博康

 国際オリンピック委員会(IOC)は1988年のカルガリー大会以降、オリンピックでの禁煙方針を採択し、会場内外を禁煙化しました。そして近年のオリンピックでは飲食店などのサービス産業を含めて屋内施設を全面禁煙とする法律・条例がある国・都市で開催されることが慣例となっています。2008年の北京大会は市内のレストランなどを全面禁煙とする条例を施行した上で開催しました。英国もレストランやパブも全面禁煙する法律を2007年に施行した上で、2012年のロンドン大会を実施しました。ロシアも2014年2月のソチ大会を開催するためにロシア全土の屋内施設を全面禁煙としました。ブラジルも2016年リオデジャネイロ大会のため同様の法律を施行しました。韓国も2018年平昌大会のため、2015年から飲食店は原則禁煙としました。日本も2020年東京大会が今夏に開かれるため、塩崎恭久前厚生労働大臣が努力されましたが、「禁煙より分煙、目指せ分煙先進国」をスローガンにする自民党たばこ議員連盟(名称のため、「たばこ」にしています)やJTなどの抵抗のため、平成30年7月に成立した改正健康増進法では、飲食店は令和2年4月1日から原則屋内禁煙が義務づけられました。原則の意味は、飲食店のうち新たに開設するまたは経営規模の大きい店では喫煙専用室の設置があれば可能であり、既存店のうち経営規模の小さな店では喫煙の標識掲示があれば喫煙可能としています。受動喫煙防止を推進する私たちとしては物足りない結果となりました。
 なお「分煙」という造語は、日本のみの言葉であり、分煙では喫煙専用室の出入りの際の副流煙や、喫煙室から出た人の呼出煙は除去できていません。すなわち分煙では、実質受動喫煙の状態といえます。したがって分煙では、オリンピックは屋内施設を禁煙とする法律・条例がある国・都市での開催という慣例に対する邪悪な脱法としかいえず、たばこ議員連盟の運動は世界の良心を踏みにじる行為と思う次第です。
 ただ、たばこ議員連盟は、喫煙者を優遇して法律に関与したため、ミスを犯しています。健康増進法では喫煙店、喫煙専用室の表示義務がありますが、全面禁煙店には「禁煙」を掲示する義務がありません。これは飲食店では喫煙するのが当たり前、喫煙者が入店しやすくすることを重要視し、さらに喫煙者が多いと錯覚していると思います。しかし現在では喫煙者は20%に過ぎません。80%の人々は非喫煙者であり、飲食時に他人のタバコの煙やにおいをいい香りとは決して思いません。ホテルでも喫煙室より禁煙室が人気です。飲食店の経営者は20%をお客さまにするのでしょうか、当然80%をお客さまにするべきです。また多くの人がタバコによるがんの発生や、タバコの害を十分に理解しています。そのように考えれば、多くの人は「禁煙」表示のお店を狙って入店するようになるものと思います。近い将来、「禁煙」の掲示が「ミシュランの星」を論ずる前の必須の基準になるものと私は予想します。
 さらに最近は受動喫煙防止を真摯に行う良心的な政治家も増えています。産業医科大学大和浩先生の産業医大タバコメルマガでは、埼玉県議会自民党県議団の喫煙対策プロジェクトチームが議員提案で埼玉県受動喫煙防止条例を上程し、その中で既存特定飲食提供施設における喫煙可能室の設置の原則禁止と喫煙室の設置は不可としました。東京都や兵庫県では禁煙の飲食店では「禁煙」を表示することが義務となっています。
 広島県では、いち早く2019年7月8日から、飲食店での禁煙、分煙、喫煙の状況の表示を管理者が施設の入り口にステッカーなどで適切に表示することになりましたが、令和2年4月1日からは上述の改正健康増進法となります。そこで私たち広島県医師会は令和元年5月23日に知事あての要望書を田中剛広島県福祉局長に手渡しました。その要望書では、2019年7月1日から学校・病院・官公庁などにおいては敷地内に喫煙所を設けないこと、またすでに既存の喫煙所があればこの機会に撤廃することや、受動喫煙防止対策のための条例を時代に遅れることなく速やかに制定すること、飲食店における禁煙対策を一層進めることを強く要望しています。
 さらに令和元年10月9日付けで広島県議会各議員に、県議会棟への喫煙室設置容認の撤回の要望書を郵送提出しました。

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