禁煙コーナー

禁煙に関するコラム

岩森 茂先生のご逝去を悼んで

広島県医師会副会長・広島県医師会禁煙推進委員会
津谷 隆史

 広島県医師会の禁煙活動の大先輩であり、また日本における禁煙運動をリードされた、広島市立安佐市民病院名誉院長、岩森茂先生が平成30年12月15日にご逝去された。平成31年2月10日には広仁会、修道医会が発起人となり、偲ぶ会が催され、昔から岩森先生と関わりの深い先生方から多くの弔辞を拝聴することができた。「優秀な先生であり、大変厳しい指導を受けた」「その反面、とっても面倒見がよくずいぶんとかわいがられた」などと、当時ヘビースモーカーであられた時代の、外科学でのご功績、サッカー部でのご活躍などのお話で和やかなお別れ会だった。ここでは広島県医師会禁煙推進委員会での岩森先生の業績を紹介し、ご冥福をお祈りする。
 呼吸器内科医である私が広島県医師会禁煙推進委員会の委員に推薦していただいたのが、平成10年である。この時の委員長が岩森先生で、以来、20年間、直接ご指導を受け、いっしょに仕事をさせていただいた。岩森先生は喫煙に対しては、一貫して厳しく対応され、特に子どもたちへの禁煙、防煙指導、受動喫煙防止に強く力を注いでおられた。私にとっては、やさしい先生で、いつも禁煙活動を応援してくださり、背後に岩森先生の存在があったことにより安心して禁煙活動ができたことを感謝している。
 広島県医師会の禁煙活動は、昭和47年に健康シリーズ『喫煙とその害』(和田直・広大名誉教授)を刊行したのが始まりである。その後、健康教育委員会の中に禁煙小委員会を設置し、昭和60年7月20日に現在の禁煙推進委員会の前身である市郡地区医師会禁煙推進連絡協議会が立ち上げられた。この委員会で委員を務めておられた岩森先生の発言が記録に残っている。以下、当時の広島県医師会速報からの引用である。
 「岩森委員は、現在のビル空調は巡回式で、幾ら一方の会議室が禁煙していても、他の会議室で喫煙していればリターンして来て、喫煙状態となる。患者を快適な環境に導くには、大気汚染が院内感染を斉らすことを知るべきである。病院の喫煙コーナーはその条件を配慮すべきである。タバコ自動販売機の撤廃を実現しない限りクリーンホスピタルの目的は達せられない。禁煙指導は全疾病への予防であり、医療費の節減に通ずると声を高らかにした」
 すでにこの時代に、分煙では受動喫煙は防ぐことができないことや、自動販売機の撤廃を訴えられていた。
 その後、禁煙推進連絡協議会から移行した、広島県医師会禁煙推進委員会の委員長に平成3年に就任された。以後、委員会の事業として、たばこから子どもを守る禁煙教育研修会、たばこから子どもを守る医師と教師の会研修会を通して、毎年、県・市教育委員会、マスコミ、PTA連合会、校長会、歯科医師会、薬剤師会、看護協会、学校保健会など多くの団体を巻き込んだ禁煙教育活動を展開された。
 また、平成4年には第9回全国禁煙教育研修会の実行委員長をされ、広島医師会館に全国から多くの医療関係者、教育者が集まった。同時期、全国レベルでは、日本禁煙推進医師歯科医師連盟の発足にもご尽力された。その日本禁煙推進医師歯科医師連盟の第9回総会が、平成12年2月に広島医師会館で広島県医師会と共催で開催され、広島県医師会禁煙推進委員長として「広島県医師会禁煙運動の歩みと吾が禁煙病院のあり方」と題した特別講演をされた。内容は、広島県医師会禁煙活動、会員喫煙率調査、禁煙指導クリニックのリスト作成、医師会速報への投稿、禁煙推進委員会による地域社会に進出した禁煙活動、年1回開催される禁煙研修会、広島市立安佐市民病院における禁煙化の歩みについてお話しされている。
 平成14年には、広島県内の医療従事者の連携によって、タバコの害から県民の健康を守ることを目的とした、広島県禁煙支援ネットワークを立ち上げられた。参加団体は広島県医師会、歯科医師会、看護協会、薬剤師会、行政(広島県福祉保健部、広島市社会局保健部)、 広島禁煙協議会などで、これらの団体がお互いに連携をとりながら、禁煙支援に取り組む活動が展開された。
 禁煙関係の執筆活動に関しては、平成16年1月に発刊された禁煙指導アトラスが挙げられる。平成14年に制定された健康増進法に伴い、医師、患者がともにタバコ害、禁煙に関する知識を容易に理解していただくために、禁煙推進委員会が中心となり企画したものである。県医師会員より広く執筆者を募り、完成されたこのアトラスも岩森先生の強いリーダーシップがあってこそなし得たものである。
 また、広島県医師会速報の禁煙コーナーでは、膨大な数のコラムが残されている。このコラムを参考にし、禁煙指導を行っていたのは私だけではないであろう。最後のご執筆は、平成29年6月15日号で、「東京都包括的受動喫煙防止法案の制定を速やかに実現すること」と題して、小池百合子東京都知事宛てに Smoke Free Tokyo Olympic を願ってつづられた手紙であった。
 広島県のみならず日本の禁煙指導のリーダー的存在であった、岩森先生がご逝去され、大きな支えがなくなり、広島県医師会としては計り知れない損失である。2020年、タバコの煙のないオリンピック・パラリンピックをぜひ見ていただきたかったが、私たちは先生の意思を引き継ぎ、喫煙、受動喫煙のない世界実現に向かって邁進していくことを改めて決意するものである。岩森先生の禁煙活動に敬意を表し、多くのご指導に感謝を申し上げ、心よりご冥福をお祈りする。

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