禁煙コーナー

禁煙に関するコラム

ポイ捨てされたソノサキは?

清水医院
清水 雅宏

 私は田舎の開業医で多くはないが禁煙外来も行っている。禁煙外来をするからには敷地内禁煙であり掲示もしているが、それでも診療所前にある駐車場にタバコの吸い殻が落ちていることがある。通行中の車や歩行者が捨てたものかもしれない(それも許されることではない)が、禁煙外来を謳っている診療所の駐車場で喫煙されるのは寂しいものである。そう思いながら駐車場の掃除をしていると気づくことがある。タバコの吸い殻は時間がたつほどフィルターしか残っていない。巻紙やたばこの葉が分解されそうなのはなんとなく理解できる。では、フィルターはいつになったら分解されるのだろうか?そもそも自然に分解するものなのか?そんな疑問がわいて改めて調べてみることにした。

 JTのHPをみると、現在のフィルターの主体は酢酸セルロースに可塑剤が加えられて形成されている記載がある。酢酸セルロースはいわゆる合成樹脂、もっと簡単に言えばプラスチックである。酢酸セルロースは、某化学メーカーなどのHPでは『天然素材から形成されているため生分解性を持ち環境にやさしい』と記載されている。しかし同じHPに『酢酸セルロースで作られた織物、成型物、コーティング膜、塗料などは、日光(特に紫外線)に対する抵抗力が大きく容易に分解しないので長期間使用することができる。酢酸セルロースは難燃性であり、その融点も高く230~300℃で溶融して炭化する。セルロース誘導体の中で酢酸セルロースは最も安定であり、長期保存に耐え、有機、無機の弱酸、動植物油、ガソリン等には侵されません』とも記載されている。何やら矛盾した記載にも見えるが、これでも本当に環境にやさしいといえるのだろうか?

 では酢酸セルロースはどのくらいで分解されるのかを調べてみると、最近のCNNの記事では最大10年かかると記載されている。しかしこの手の試験は、試料を薄くし土壌に埋めるなど分解しやすい環境で行われており、舗装された場所などでは当然それ以上の時間が必要になる。ならばその分解されないフィルターはどうなっていくのか?考えてみれば当然だが、水に浮くので雨水や下水、川の流れに乗って最終的に海までたどり着くことになる。昨年からプラスチック製ストローによる海洋汚染が話題となっている。しかし報告によれば、海洋ゴミのうちストローの割合は0.02%程度で、それよりもタバコの吸い殻、フィルターのほうがはるかに多いとされている。日本の海洋ゴミの調査を行っているNGOの報告では、タバコの吸い殻やフィルターは、海岸漂着ゴミの9.2%を占めていると報告している。つまりポイ捨てされたタバコの吸い殻は、最終的にプラスチックごみによる海洋汚染の大きな一因となっているのだ。

 そう思うとポイ捨てされた吸い殻はきちんと回収しないといけないし、ポイ捨てさせないことが大事になってくる。喫煙者のマナーに働きかけることも大事だが、そもそも喫煙者が減ればポイ捨ても減ってくるはずである。禁煙外来の意義がこんなところにもあるのかと今更ながらに思い直すことになった。最後に、自分でもタバコのフィルターがどれくらいで分解されるのか試してみようと、プランターに土を入れタバコを何種類か上に置いてみた。現在1ヵ月以上経っても、フィルターは色も形も変わる気配はない...。

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