禁煙コーナー

禁煙に関するコラム

新型タバコとは何か(その1)

医療法人あずさ会 森整形外科 森 直樹

 2017年10月21日に東京都のホテルニューオータニで第56回十四大都市医師会連絡協議会が開催されました。今年は2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けたシンポジウムが行われましたが、その一つが「タバコ対策について」です。冒頭で、日本対がん協会参事(禁煙推進・対がん事業開発)の望月友美子先生より「新たなタバコ流行:新型タバコ(加熱式タバコ)の有害性と問題点」と題して基調講演が行われたので報告させていただきます。

先手と規制逃れ
 それは過去にも起こりましたが、今もまた起きています。タバコの健康被害があまり知られていなかった昔、すでに健康被害を知っていた当時のタバコ産業は、映画の喫煙シーンや広告に外科医や看護師を出したり、「今日も元気だたばこがうまい」というコピーなどで次々と先手を打ち、タバコと健康のイメージを重ねる印象操作に成功しました。情報操作で先手を打つことはタバコ産業の戦略のひとつですが、ハイテクなデバイスを作れるようになった現在、新たな大きな先手となったのがiQOS(アイコス)などの新型タバコです。
 反タバコ意識の高まりの中でタバコ産業が見出した活路とは何でしょうか? なんとそれは禁煙や受動喫煙対策なのです。規制逃れもタバコ産業の戦略のひとつですが、新型タバコは規制を逃れるため「煙」を出さないことを前提に開発されました。「禁煙だけどアイコスはOK」という場所が増やされているそうです。フィリップモリス社は紙巻きタバコをいつか終わらせると宣伝し、"スモークフリー"財団まで設立しました。タバコ産業によって次々と先手を打たれる中で、これまでの「煙」や「スモーク」を標的にした禁"煙"のあり方は時代遅れになりつつあります。

イメージ戦術
 タバコ問題の本質を理解しているのはタバコ産業の方で、1971年にはすでに「我々はタバコ産業というより、むしろニコチン産業で働いている」と認識されていました。新型タバコは間違いなくニコチン依存のデバイスです。物作りが好きな日本人は新型デバイスに親和性が高いと言われていますが、それは依存性を高めるよう(喫煙者にとってはガツンとくるよう)薬物の吸収のタイミングまでコントロールされたハイテクなデバイスです。銀座のアイコスショップはアップルストアをほぼ真似た展示をしており、アイコスと洗練のイメージを重ねる印象操作をしています。タバコの害の知識が少ない日本の子どもにとってアイコスはかっこよく見える存在で、アイコスの98%は狙い通り日本で売れているそうです。

本当の禁煙が困難に
 禁煙を決心した人が、平日午前中の禁煙外来にアクセスできる機会はわずかです。でも24時間入手可能で煙の出ない新型タバコなら見かけ上は禁"煙"でき、本数も減らせたと思えるため、微妙に罪悪感を軽減できるのです。
 飲食店などが「禁煙だけどアイコスはOK」なら、禁煙者がついアイコスに手を出す機会も増えます。ニコチン産業の思惑どおり、アイコスならタバコよりマシだと発言する医師も現れ、後押しも万全です。分煙や受動喫煙対策は新型タバコ普及のための布石だったとも思えます。その間にニコチン産業は禁煙のその先へ先手を打ち、ニコチン依存症の患者が離脱するのはさらに困難になってしまったのではないでしょうか。
(平成30年1月25日号につづく)

※十四大都市医師会連絡協議会では、全国の医師会から有用な報告がありました。広島市医師会は沖宗正明市会議員による平和公園全面禁煙条例化を発表しました。詳細は広島市医師会だより平成29年12月号に寄稿しました。

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