禁煙コーナー

禁煙に関するコラム

東京都包括受動喫煙防止法案の制定を速やかに実現すること(その22)(最終章4)

広島市立安佐市民病院
名誉院長 岩森 茂

 いよいよ総括と提言の項になってきた。まずその前に私が本稿を草した始めから抱いていた幼稚な夢を紹介しておきたい。それは紅花というきれいな赤い色素を有する花であるが、薬用にも使われ、食用油にもなっている。これをたばこ葉に混ぜれば紅色の煙も出るのでは?そこで私は学生時代にたわむれたよもぎ、最近はやりの明日葉と各々乾燥させて紙巻煙草(けむりぐさ)にして吸うことができないものか?うまくいけばうすいピンク色のスモークが生まれるのでは?成功すると東京オリンピックもきれいな色に包まれた空間になるのでは?これはあくまでも私の幼稚な漫画的な物語として見逃していただきたい。私の終章にあたっての提言を、以下に述べていく。
①たばこ事業法を絶対廃止する。その始まりの歴史は深く述べないが、恐れ多くも明治天皇の御下意である。たばこを増産し、日露戦争の用途に役立てよ!!とのことであった。以後たばこは増産され続けたため、結局はたばこ事業法の制定につながったようである。徳川幕府の禁煙令からあまり時は移っていないはずである。このたばこ事業法の主旨はいうまでもなく「たばこ事業等の健全な発展を図り、もって財政収入の安定確保及び国民経済の健全な発展に資すること」で終わっているが、たばこが国家にとって有害であり、健全な発展はしてほしくないにもかかわらず、尚、事業法の発展をこいねがう財務省(JT株33%を有し、その利益でも○兆円に及び株利益は所管官庁ではどのように処理しているのであろうか?私の仮名をつけてよく使用する Task force はいまだに財務局内所のたばこ部門に席を置き、農林水産省に葉たばこ関係で結びつきがあり、今度は禁煙運動の高まる中で分煙という私の忌み嫌う言葉を駆使して残念ながら厚生労働省が手玉に取られている。いまだに書き足らないことが多いが、何れにしろわが国民の健康増進の目的に反し、FCTC(タバコ規制枠組み条約)のすすめなど無視し続けているJT!!これを野放しにしている財務省の「たばこ事業法」は既に過去の反古法案となっていてもおかしくない。これは是非とも廃案か厚生労働省に移す!などの他案などを検討してもらいたいのである。
②分煙について...東京都において関係省庁が、居酒屋、レストランなどに分煙促進と称して喫煙室の造成を援助する資金を出すことはどうしても納得しがたい。愛煙家を援助して尚喫煙癖を助長してたばこ病発症の手助けをする、ひいては医療費増大の原因となることを知らない。私は喫煙者を歴史上の事件、イギリス、清国の戦いにおけるアヘン中毒患者がアヘン窟に送り込まれた姿を否が応にも連想するのである。その上に必ず変わるであろう居酒屋全面喫煙令が布告された場合は喫煙室は不要撤去という事態が起こることは危惧していないのであろうか?
 厚生省自体が平成8年に「公共の場所における分煙のあり方検討会報告書」を発表(この時わが国が初めて分煙の言葉を使った)、引続き厚生労働省が「職場における分煙対策」、東京都が「都立施設における分煙化計画...平成12年まで」を相次いで発表した。この時まで分煙という言葉を封じていたはずの厚生労働省がJTの発言に対し「JTは分煙がゴール、たばこを吸う方と吸わない方がいる限り、分煙という大きな概念は取り去れない」との反論を受け入れた格好となった。
 ともあれ厚生労働省と名を変えても本省の分煙意識はJTの言うままに続いており、以後の学術会議、日本禁煙医師連盟の要望にも耳を貸そうとしないのである。この間に起きた神奈川県受動喫煙防止条例も松沢県知事(当時)の公約はいつの間にか空間分煙、時間分煙を容認する情けない条例となり、これを兵庫県条例にも繰り込まれてしまった。まさかWHOがこれに便乗するとは考えられないが、他国のたばこ生産大手メーカーがこれに賛同している雰囲気はあまりにも情けなく、私は広島県禁煙医師連盟とともに Smoke free を掲げて真正面からJTに対抗していきたいと考えている。とにかく分煙という言葉は国際的には通用しない!!
③ Smoke free とは...広島では Smoke free という青色のバッチを作り、関係機関に「スモークフリー」の環境を呼びかけている。念のために正しい意味を紹介しておくが、これは「一匹狼の国」という世界の禁煙状況をつぶさに調査されている宮本順伯博士(東京都・開業医)のかくれたる名著であるが、先生は早くから Smoke free Japan、Smoke free Tokyo Olympic を提言し続けてきておられる。この著の中にも Smoke free とはたばこの煙を全く排煙されている状態を指し、欧米では一般的に使用されている。喫煙自由の状態を意味するものではなく、喫煙設備を完全に廃止し、全面禁煙の規制後に初めて使用可能となる状態である。関係省庁各位に改めて勉強してもらいたいものである。いずれにしろ特に厚生労働省には分煙を謙虚に廃止し、スモークフリーという言葉を使用していただきたいと真摯に念願するものである。国際的に大いに恥ずべきものであるが、喫煙室がわが国の二大空港羽田空港は69施設、成田空港には23施設あり、各々の施設より扉の開閉によって排煙される害の大きさは大変なものがあり、これは国としても放置しておくべき問題ではないことを大きな声で警告しておきたい。

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